相続税を意識した遺言

相続税を意識した遺言

私は、預貯金の他数件の不動産を所有しています。遺言書を作成したいと思うのですが、内容としては「息子に不動産を全て、娘に預貯金及び金融資産は全てを相続させる。」というものです。不動産は祖父の代から受け継いだもので、共有などは避けたいので息子に継いでほしいのです。預貯金と株式に比べると不動産の価値の方が高く、遺留分の侵害もないと思うのですが、不備等はありますか。
遺言書の形式としては、自筆ではなく公正証書遺言で行うことをお勧めします。遺言書の内容については、遺留分の侵害しないよう意識することも必要ですが、相続税の納税の準備を意識することが必要です。又、遺言書は作成しっぱなしではなく、1年に1度など定期的に見直しを行うことをお勧めします。
1.遺言書の形式面

遺言は、故人の最後の意思を子供など相続人に伝える手段として有効ではあるのですが、自筆の遺言ですと、ミスが多くなる可能性があり、遺言書が無効となる可能性があります。
自筆の遺言を行うには、全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない(民法968条)という要件があります。この要件に合致しない遺言書としてワープロ打ちや日付の忘れなどが見られます。
その点、公正証書遺言ですと、公証人の立会のもと遺言書が作成され、その内容は公証人役場において保存されるため、より確実に遺言の内容を実現することができます。

2.遺言書の内容面

遺言の内容としては、故人の意思が尊重されるべきではありますが、「争族」を避けようと思うと「遺留分」と「相続税」を意識して作成する必要があります。
遺留分とは、被相続人の意思によっても奪うことのできない相続分であって、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者や子及びその代襲相続人、子がいない場合の被相続人の親など)に認められています(民法1028条)。この遺留分の詳しい説明は別稿に譲りますが、遺留分を侵害した遺言ですと、相続人同士での訴訟になるリスクがあり、又遺言書通りの相続が行われなくなります。訴訟のリスク等をなくすためには、遺留分を意識して相続人一人に価値ある財産を全て相続させるのではなく、一定額他の相続人にも相続させることが必要になります。
又、相続税の納付のことを意識しておかないと、遺言で不動産しか相続させなかった場合、相続税は原則として金銭で一括に納付するため納税資金の確保ができなくなるおそれがあります。相続財産が不動産等高価なものであったとしも、納税資金のために売却するという事態を招きかねません。これを回避するためには、不動産など引き継いで管理等をしてほしい財産を相続させる場合には不動産などと合わせて、現金や金融資産など換価性の高い財産を相続させることが必要になってきます。

3.遺言書の定期的な見直し

遺言書は、書き手に遺言時点において一定の判断能力(遺言能力ともいわれます)を有しておれば、何度でも書き直しが可能で、日付の新しい遺言書が優先されます。
遺言書の書いた当時の価値であれば、上記の「遺留分」「相続税の納付資金」などの問題をクリアしていたとしても、市場の変化や相続人の増減などにより、実状と合わない遺言や今後の「争族」のたねになる可能性が生まれます。
そのため、年に1度は遺言書の見直しを行い相続財産や相続税の計算、書き直しをお勧めします。

 

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