被成年後見人及び被保佐人の遺言書

被成年後見人及び被保佐人の遺言書

 私の父は高齢で、最近では軽い認知症なのではないかと思っています。将来的には、成年後見の申立や保佐の申立を行わなければならないと思っています。父はことあるごとに遺言書を書き換えており、孫や弟などにその時の心のままに財産を相続させると書いているようです。今後、弟などがそそのかして、遺言書を書かせることもあるように思うのですが、父が被成年後見人や被保佐人となった後で、父が遺言を書こうとした場合には、遺言書の効力に違いはあるのでしょうか。
 遺言を行うには、法律の定める方式による必要がある他、遺言時点において一定の判断能力(遺言能力ともいわれます)を有している必要があります(民法963条)。遺言能力とは、端的には誰に何を相続させ遺贈するのかを理解して決定できる判断能力のある状態のことをいいます。
満15歳の者は遺言能力がある(民法961条)のが原則です。しかし、被成年後見人(民法7条等)や、被保佐人(民法11条等)の場合は、成年後見人等に契約などの代理権や成年後見人等の行った契約などの取消権なども認められている(民法9条、13条、)ことから、法律上も別の取り扱いとなっています。
以下、被補助人と被保佐人・被成年後見人に分けてお話しします。
(1)被補助人、被保佐人
 被補助人とは、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(民法15条)をいい、被保佐人とは 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者(民法11条)をいいます。いずれの類型も精神上の障害によって、一定の判断能力が低下していることを要し、その程度により被補助人や被保佐人として審判が行われることになります。
 被補助人・被保佐人は日常品の購入その他日常生活に関する行為(スーパーでの買い物等)は補助人又は保佐人の同意は必要ありませんが、一定の行為(不動産等重要な財産を得又は失うことを目的とする行為や相続の承認・放棄、借金など)については補助人などの同意が必要となります。
 もっとも、遺言に関しては補助人や保佐人の同意は必要ありません(民法962条)
 したがって、被補助人・被保佐人であるという理由だけで遺言が無効となることはありませんが、遺言時点の認知症等の程度によっては遺言が無効になることもありえます。
(2)被成年後見人
 被成年後見人は、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者をいいます(民法7条)。成年被後見人も、日常品の購入等の行為に同意が必要ではないことには変わりありませんが、上記の類型とは異なり、日常品の購入等以外の行為は成年後見人が取り消すことができます(民法9条)。
 被成年後見人は、事理を弁識する能力を欠く常況にあるとされており、原則として遺言能力はないとされています。
 もっとも、まだら認知症や一定の判断能力が回復した場合には、医師二人の立会の下、医師の署名押印等があれば遺言として有効となります(民法973条)。

 遺言書は、書き換えられた場合には、作成した日時が新しいものが有効となるため、遺言者が亡くなった後に、遺言書が自分にとって不利である相続人が、ある時点から遺言者には遺言能力がなかった旨の主張がされることもあります。上記のとおり、補助や保佐の審判を受けた場合、認知の程度によって遺言書が無効となる可能性もあります。また、成年被後見人が遺言をするには、厳格な要件が必要となるため、成年後見の審判を受けた場合には、ほぼ遺言をすることは難しいといわざるを得ません。
遺言作成には、専門的な知識が必要です。一度お父様と一緒には弁護士等の専門家に相談されることをお勧めします。

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