遺族年金の受給と相続放棄

 先日、父が亡くなりました。退職前は会社員として仕事に精を出していたのですが、人が良いのか、退職後に友人の借金の連帯保証人になるなどで現在数千万円の負債が残りました。自宅の建物や土地は母のお父さんから母が受け継いだものです。父の遺産としては負債のみです。そこで、母と私と姉は全員で相続放棄を行いたいと思っています。
しかし、母は遺族年金は受け取る権利があると思うのですが、母は、相続放棄をしても遺族年金を受給することはできるのでしょうか。
 遺族年金は、遺族の固有の権利であり、相続放棄をしても受給することができます。
 相続の放棄をすれば、初めから相続人とならなかったものとみなされます。マイナスの財産はもちろんのことプラスの財産についても相続しなかったことになります。
相続人は、自己のために相続があったことを知ってから3か月以内(熟慮期間といわれています)に単純承認もしくは限定承認又は放棄をしなければなりません(民法915条1項本文)。
 この熟慮期間内に相続人は財産の調査を行うことができ、限定承認又は相続放棄を行う場合は、家庭裁判所へ申述を行う必要があります(民法915条2項、924、938条)。
 この期間内に限定承認や相続放棄を行わなかった場合、単純承認をしたとみなされます(民法921条)。この単純承認は、被相続人のプラスマイナスを問わず財産等を相続することになります。
 また、相続人らが、遺産を処分した場合にも、単純承認したものとみなされますので、相続放棄をすることができなくなります(民法921条1号)。

 遺族年金や会社が給付する弔慰金などは社会保障関係の特別法などによって、親族など被相続人と一定の関係のある親族に対して給付されるものとされており、被相続人の遺産であるとは考えられておらず、相続放棄をしても受給することができるとされています。

 遺族年金は、厚生年金保険法(58条以下)や国家公務員等共済組合法(89条等)などで、受給権の範囲や順位が決められており、民法が定める相続人の範囲・順位とは異なっています。民法では、亡くなった方(被相続人)の配偶者のほか、子や被相続人の父母、被相続人の兄弟姉妹も相続人となる場合があります(民法890条等)。
 しかし、厚生年金保険法では、「遺族厚生年金を受けることができる遺族は、被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持したものとする。」(厚生年金保険法58条)とされています。
 また、遺族年金の受給権消滅事由や各種支給停止事由(受給権者の婚姻、子が18歳になるなど)(厚生年金保険法58条、59条、63条から68条)があることに照らすと、遺族年金は、被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的としたものであると考えられています。
 したがって、遺族年金等は相続人の遺産であるとは考えられていません。
 大阪家庭裁判所において遺産性が否定された審判があります(大阪家審昭和59年4月11日、家月37巻2号147頁)。
 以上から、相続放棄しても遺族年金等を受け取ることはできます。

以上

安心と笑顔を実現する法律相談