預金の使い込みが疑われる場合の遺産分割

預金の使い込みが疑われる場合の遺産分割

母が先日亡くなりました。姉が生前母と同居していたこともあり、実家の土地建物を姉に相続させ、預貯金等は私達2人の相続人で分ける旨の遺産分割協議書の作成を行おうと思っていました。しかし、銀行に取引履歴の明細を請求したところ、1月で30万円から多い月で50万円が引き下ろされており、総額で2000万円の使途不明金があります。母は年金などの収入もあり、質素な生活をしていたので、多額の預金を引き出す必要性はなかったはずです。
そこで、どうしてひと月に30万円も引き出したのかと姉に聞くと、孫へのプレゼントや母個人の交際費等のために引き出したと言われました。
しかし、私はほとんどのお金は姉の使い込んだのだろうと思っています。使い込み額を無視した遺産分割はしたくありません。どのようにすればよいでしょうか。
最近、同種のご相談が増えております。なるべく早急に、専門の弁護士へのご相談されることをお勧めします。
相続の対象となるのは、現金や不動産だけでなく、貸金や死亡事故による死亡者の加害者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権などの権利も対象となります。
 仮に、お母様の生前に、お姉様によるお母様の預金の使い込みであった場合には、お母様は生前、使い込みをした姉に対して不当利得返還請求権(民法703条)や不法行為に基づく賠償請求権(民法709条)を持っていたことになります。
そして、お母様が亡くなったことにより、お母様のお姉様に対する2000万円の請求権が遺産分割協議を待たずに相続人らに法定相続分に基づいて分割されることになります。
預金債権に関しては遺産分割協議がなければ分割されませんが、預金の無断費消による不当利得返還請求権を含む金銭債権については相続の発生により当然に分割されて各相続人が法定相続分によって承継するというのが判例の考え方です。
今回のケースでは、お母様のお姉様に対する2000万円の不当利得返還請求権が、お姉様と相談者様に各2分の1ずつ(1000万円ずつ)が分割承継されます。
したがって、相談者様はお姉様に対して1000万円の不当利得返還請求権を行使することができます。なお、お姉様が承継した1000万円の請求権は、混同により法律上当然に消滅することになります。
遺産分割協議では、残された不動産や預金債権、上記の使い込みについて相談者が承継した1000万円の請求権についても協議して、全体として、取得する取り分が公平となるように話し合う必要があります。
話し合いがつかない場合は、遺産分割調停を申し立てることとなります。
不当利得返還請求権等の金銭債権は、相続の開始と同時に分割承継され、遺産分割協議の対象とはならないので、調停でも話し合いができないのが原則ですが、相続人全員が同意をすれば遺産分割協議や調停においても協議等の対象とすることができます。
お姉様が使い込みについて、遺産分割調停で遺産分割の対象とすることに同意しなかった場合や、遺産分割調停内で話し合いがつかなかった場合は、預金の使い込みによる不当利得返還請求権ついては、遺産分割審判の申立もできないことになっておりますので、別途訴訟提起して取り返すほかありません。
訴訟では、請求する側が使い込みの事実を証明する必要があります。使い込みが見つかった時点で、すぐにお姉様に書面で使い込みを認めさせたり、お姉様が預金の使い込みを認める発言をした際にはその会話を録音するなどして証拠を保全する必要があります。
また、お母様が生前認知症であった場合には、要介護の等級認定書や医師の診断書などの証拠を元に、お姉様がいつ頃からお母様の預金管理を開始した時期を特定する必要があります。
預金の使い込みの解決方法は、上記のとおり、非常に複雑ですので、すぐに専門の弁護士に相談されることをお勧めしております。

 

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