月々の援助が特別受益に該当するか

相続が開始して遺産分割未了の間に第二次の相続が開始した状況で、第二次被相続人から特別受益を受けた者がある場合に持戻しを行う必要があるか

 

半年程前に父が亡くなり,そのひと月後に母が亡くなりました。父には不動産などの遺産がありましたが,母にはほとんど遺産はありません。
 相続人は私と弟の二人です。相続人である私と弟とで遺産分割の話し合いをすることになりました。
 母は末っ子であり、収入の少ない弟のことを心配して,弟が実家による度に,母の年金などから数十万単位の援助していたようです。
弟が母から援助を受けていたお金は,合計で500万円になります。弟もこれを認めています。
まず、弟が母から受けた贈与は、特別受益になりますか?
また、父の遺産の分割協議に当たり、弟が母から得ていた特別受益は、持ち戻しの対象とすることになるのでしょうか?

参考:民法第903条(特別受益者の相続分)

  1. 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
  2. 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
  3. 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有する。

 

一定額は、特別受益にあたり,持ち戻しの対象となります。
 まず、弟さんが受けたお母さんからの援助が、「生計の資本として贈与」となるのかが問題となります。
 少額の贈与が比較的に長期間にわたって多数かなされ、その総額が多額になった場合は、各贈与の時において、親族間の扶養的な金銭援助と考えられる一定金額を推計して、一定額以下は持ち戻しの対象としないが、一定額を超過する場合には扶養義務の範囲を超えるものとしてその合計額を持ち戻しの対象となると考えられます。
 このような考え方には異論もありますが、共同相続人間の公平を図るという特別受益の制度趣旨から、このような選択基準に基づいてもち戻しの範囲を画するほかないと思われます。
 審判例としては、東京家審平成21年1月30日(家月62巻62頁)は、月額10万円を超える資金援助は生計の資本としての贈与であり、特別受益としています。
 
 次に、お父さんの遺産分割において、弟さんがお母さんから受けた特別受益を持ち戻す必要があるか否かについて検討します。
確かに、民法903条の特別受益の規定は、被相続人から遺贈や贈与を受けた場合を想定しており、父の遺産分割に当たり、母から受けた贈与等を特別受益としてもち戻し必要はないのではないかとも思えます。
また、お母さんには、その相続開始時に遺産分割の対象となる固有の財産もないから、特別受益を考慮する場面はないとも考えられます。
しかし、父の遺産分割協議に当たり、母から受けた贈与も特別受益に該当し,持ち戻しの対象となります。以下,参考となる判例を紹介します。《最高裁第三小法廷決定平17年10月11日第民集 59巻8号2243頁》
 『遺産は、相続人が数人ある場合において、それが当然に分割されるものでないときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属し、この共有の性質は、基本的には民法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではない(最高裁昭和30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁、最高裁昭50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁、最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決・民集40巻2号389頁)。そうすると、共同相続人が取得する遺産の共有持分権は、実体上の権利であって遺産分割の対象となるというべきである。
 本件におけるA及びBの各相続の経緯は、Aが死亡してその相続が開始し、次いで、Aの遺産の分割が未了の間にAの相続人でもあるBが死亡してその相続が開始したというものである。そうすると、Bは、Aの相続の開始と同時に、Aの遺産について相続分に応じた共有持分権を取得しており、これはBの遺産を構成するものであるから、これをBの共同相続人である抗告人及び相手方らに分属させるには、遺産分割手続を経る必要があり、共同相続人の中にBから特別受益に当たる贈与を受けた者があるときは、その持戻しをして各共同相続人の具体的相続分を算定しなければならない。』としています。
 判例は理論上の理由のみを示していますが、実質的な理由は、特別受益のもち戻し制度は、相続人間で公平を図ることがその趣旨ですが、本件の場合にも、もち戻しを認めることで実質的な公平を図ることができるということだと思います。
 ご参考にしてください。

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