遺産分割協議がまとまらない場合の手続

遺産分割協議がまとまらない場合の手続

 2年前に、父が亡くなりました。父の生前の希望としては、先祖代々の土地や畑などは長男である私に継いで欲しいとのことだったのですが、父は遺言書を作成する前に亡くなりました。私自身は都会で働いているため、実家に帰って農業を続けるというのは難しい状況です。姉は、実家に帰って土地を守る意思があり、実家を継ぐにあたって、土地や畑を維持していくにもお金が必要なので、不動産等はもちろん株式についても姉が取得したいと主張し、私に対しては相続を放棄してほしいと言っています。私としては相続の放棄や持分の譲渡はしたくありませんし、遺産の半額は欲しいと考えていますので、姉とは遺産分割協議がまとまりません。話し合いがまとまらない場合、どのような手続きを行う必要があるのでしょうか。
 相続人間での話し合いがまとまらない場合、原則として家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる必要があります。遺産分割調停はあくまで家庭裁判所を通じての相続人の話し合いのため、相続人が合意すれば法定相続分に反する分け方であってとしても遺産分割協議を成立させることは可能です。
しかし、あくまで話し合いである以上、相続人の一人が強硬に協議案に反対している場合には、調停は不調となります。
調停が不調となった場合、自動的に遺産分割審判に移行します。審判では、調停とは異なり裁判官が審判時に分割方法を決めなければならない相続財産につき、一切の事情を考慮して審判を行います。法定相続分に従った内容の審判となり柔軟性に欠ける結論となるケースも見られます。
遺産分割の方法としては、現物分割(現に存在する相続財産を分割する)、代償分割(相続人の内の一人が財産を取得、他の相続人にそれに応じた代償金を支払う)、換価分割(相続財産を売却し、その代金を分配する)という方法が存在しますが、代償金を支払う資力がない場合では、相続財産を競売にかけ換価もしくは、土地であれば共有物とするという審判が行われることもあります。
土地が共有となれば、使用収益がしにくく、単独所有に戻すには改めて共有物分割請求訴訟によらなければならず、せっかく遺産分割調停や審判を経た意味がなく柔軟性に欠けるという批判がなされます。
 遺産分割調停はあくまで裁判所を通じた相続人間の話し合いであるので、相続人全員に対して申し立てる必要がありますが、申立人の提案に異存のない相続人は必ずしも裁判所へ出向かずに文書での対応も可能となっています。
 遺産分割調停では、寄与分の主張がある場合や遺産の範囲に争いがある場合でも合意のある範囲での分割、法定相続分とは異なる分割、残された配偶者がいるのであればその面倒を誰が見るのかといった調停条項などつける等、裁判所を通じた相続人の話し合いであるが故の柔軟性があります。
一方、審判では、寄与分を定める手続は別途申立を要しますし、遺産の範囲に争いがあれば遺産確認の訴訟を行い、先に遺産の範囲を確定させる必要もあります。また、審判事項ではない残された配偶者の面倒などの特別な条項もつけることはできません。
 また、以前までは預貯金等の金銭債権は、相続開始時に当然に法定相続分で分割されるとされてきました、(最判平成16年4月20日判時1859号61頁、最判昭29年4月8日民集8巻4号819頁)ので、預金等の金銭債権は調停や審判事項ではありませんでした。
しかし、近時、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることなく、遺産分割の対象となる(最高裁大法廷平成 28 年 12 月 19 日決定)との決定がでました。
これにより、預金債権は、遺産分割調停事項となり、また、審判事項となりました。
不動産や自社株など共有や分散すると後で単独所有とするには大変な手間がかかりますし、譲渡所得税等の税金がかかるなど当事者にとって不利益が多いといえます。
やはり、細部にはこだわらず、相互に妥協し、なるべく遺産分割調停内での解決を目指すことが、費用や時間の節約になるといえるでしょう。

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