遺言書を見つけたらまずは検認手続

 先日、父が亡くなり、初七日も終えました。親族で集まった折に、親族総出で片付けを行うと遺言書が出てきました。遺言書を見るのも初めてで何をどうすればよいかさっぱりわかりません。勝手に親族で開けて財産を分けてもよいのでしょうか。
 出てきた遺言書が公正証書遺言であった場合は別ですが、自筆証書遺言等であれば、その保管者や発見者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません(民法1004条1項2項)。その遺言書が封印のある封筒に入れられていた場合は、家庭裁判所において、相続人又はその代理人が立ち会ったうえで開封されなければならず(民法1004条3項)、遺言書を遅滞なく提出しなかった場合や家庭裁判所外で開封した場合、検認手続を経ず遺言を執行した場合には5万円の過料が処せられます(民法1005条)。もっとも、うっかり開封して過料が科されたとしても遺言やその後の執行の効力には影響がないため、仮に開けてしまった方もご安心ください。ただし、偽造等が疑われたり、遺言無効確認訴訟のきっかけになるので、くれぐれも勝手に開けないようにご注意ください。
 家庭裁判所で行われる「検認」手続は、遺言書の変造・隠匿の防止を目的として、遺言書の現状(方式や記載など)を確認し、証拠を保全する手続です。あくまで、遺言書の現状という客観的な状況を確認するというだけなので、遺言者の真意に基づくかどうかや有効かどうかといった判断はされません(大審院決定大正4.1.16民録21輯8頁)。
 検認の申立がなされると、裁判所から、相続人や遺贈の相手方である受遺者に対してその旨が通知されます。したがって、知らない内に遺言が執行されるという事態を防ぐことができます。
 遺言の内容によっては、相続人間の争いの種となるような、相続分の指定がなされた場合、後の遺留分減殺請求が行われるおそれもあり、相続人ら自身には公正な遺言執行が期待できない場合もあります。
遺言内容の執行の中でも認知(民法781条2項、戸籍法64条)や相続人の廃除又はその取消し(民法893条894条2項、戸籍法97条)については、相続人ではなく遺言執行者がその手続を行わなければなりません。遺言執行者が選任された場合、遺言の執行は遺言執行者に全面的に委ねられる(民法1012条1項)ので、相続人には執行に関し何の権利義務もなくなります。
 仮に相続人が、遺言執行者が選任されているにもかかわらず、相続財産の売却など処分をしたとしても無効と判断されます(大審院判決昭和5.6.16民集9巻550頁)。
 遺言執行者が選任されるのは、①遺言者が遺言により指定する場合(民法1006条1項)、②遺言者が遺言で第三者に執行者の指定を委託し、その第三者が指定する場合(同条1項~3項)、③相続人や被相続人の債権者、遺贈を受けた者などが請求し、家庭裁判所が選任する場合(民法1010条)があります。
 遺言書を発見したにも関わらず、提出せず又隠した場合には「相続欠格」(民法891条5項)として初めから相続人でなかったものとされることもあります。
 自筆の遺言書を発見された場合には、まず封を開けず家庭裁判所への提出を行いましょう。

 

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