相続税対策 ②(生前贈与)

相続税対策 ②(生前贈与)
贈与の基礎控除枠は相続税対策として頻繁に活用されます。

1. 贈与税の申告

1月1日から12月31日までの間に贈与を受けた個人は翌年の申告時期に申告書を提出する必要があります。

2. 基礎控除

贈与を受ける者一人当たり年間110万円までは非課税となります。妻や子供、孫などに毎年、各110万円ずつ贈与しても贈与税はかかりません。
妻一人、子供3名、孫4名に贈与する場合、総額880万円までの贈与は非課税となります。

3. みなし贈与財産にご注意ください。

実質的に贈与と同様の結果となる財産の移転については、これを贈与によって取得としたものとみなして、贈与税の課税対象となる場合があります。これをみなし贈与財産といいます。
典型的な例としては、生命保険で保険料を保険金受取人以外の者が負担していた場合です。たとえば、長男を被保険者、受取人が次男で、保険料を父親が負担しており、長男が死亡した場合などです。(なお、被相続人死亡で保険料負担が被相続人の時は、みなし相続財産となり相続税の課税対象となります。)。
みなし贈与財産には、財産を著しく低い価格で譲渡した場合、債務の免除を行ったような場合、その他利益享受を受けた場合などが考えられます。

4. 遺言書と異なる遺産分割を行った場合の贈与税の課税リスク

遺言書と異なる遺産分割を行った場合には、通常は、贈与税の課税は発生しないと考えられます。
相続人の一人に対して包括遺贈がなされた場合は、遺贈の放棄が認められており、これに遡及効があることから、通常の遺産分割が行われたと考えられるため、包括受遺者からの贈与とはみなされないということが理由です(国税庁ホームページ、タックスアンサーNO4176)。
私見ですが、相続人の一人に包括遺贈がなされた場合以外については、理論的には、いったん確定した相続財産の再分配として贈与税の加算が問題となるとする考え方も見られますが、相続税申告の際に、相続人全員で話し合って分割した遺産分割協議書のみが申告書に添付されることとなるので、通常は、贈与税が課税されることはないと考えます。このような場合にまで贈与税が課税されるとする見解は、杓子定規すぎるのではないでしょうか。この点については裁判例がなかったので、今後の実務の運営が気になります。

5. 遺産分割をやり直した場合の贈与税等のリスク

当初の遺産分割を合意解除し、遺産分割をやり直した場合には、その再配分により取得した財産は、相続により取得した財産とは言えません。
したがって、共同相続人間の自由な意思で贈与又は交換が行われたとして、贈与税又は譲渡所得税の課税関係が生じる可能性があります。

6. 知っておきたい贈与税の非課税及び各種特例について

  • ㋐ 相続開始前3年以内の生前贈与は相続税加算の対象となり、基礎控除110万円以内の贈与であっても加算の対象となります。
    しかし、以下の特例を受けた場合は、相続税の課税対象とはなりませんので、相続税対策として利用されています。
  • ㋑ 夫婦間の居住用不動産等の贈与に関する配偶者控除の特例
    婚姻期間20年以上の配偶者から、居住用不動産又は居住用不動産購入の資金の贈与を受けた場合、基礎控除110万円の他に2000万円までの控除を受けることができます。相続開始前3年以内であっても相続税加算の対象とはなりません。
  • ㋒ 住宅取得等資金の贈与税の非課税
    直系尊属からの贈与により居住用家屋の新築等の対価に充てるために贈与を受けた場合で、一定の要件を満たすときは、非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となります。省エネ住宅等良質な住宅の場合は一般の住宅と比べて非課税枠が大きくなります。
    平成27年12月までに契約締結した場合は、良質な住宅は1500万円、一般の住宅の場合は1000万円までが非課税となります。
  • ㋓ その他贈与税が非課税となるものとしては、
    i. 扶養義務者間で教育費や生活費に充てるために贈与を受けた財産で通常必要と認められる範囲内のもの
    ii. 特定障害者が信託受益権を取得した場合の非課税制度
    国内に居住する特定障害者が特定障害者扶養信託契約に基づいて信託受益権を贈与により取得した場合、その信託の際に「障害者非課税信託申告書」を信託会社など(信託会社及び信託業務を営む金融機関)の営業所を経由して特定障害者の納税地の所轄税務署長に提出することにより、信託受益権の価額(信託財産の価額)のうち、6,000万円(特別障害者以外の者は3,000万円)までの金額に相当する部分については贈与税がかからない(相続税法21条の4)。
    iii. 教育資金の一括贈与にかかる贈与税の非課税があります。祖父母(贈与者)が、金融機関に子・孫(受贈者)名義の口座等を開設し、教育資金を一括して拠出し、金融機関等の営業所等を経由して教育資金非課税申告書を提出することによって、子・孫ごとに1,500万円までの贈与が非課税となります。

7. 贈与税率

税率には2種類あります。

㋐(一般贈与財産、一般税率)

スマホでは横スクロールしてご覧ください)

●基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
●税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
●控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円
㋑(特例贈与財産用、特例税率)

これは、祖父から孫への贈与、父から子(20歳以上)への贈与税率です。

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●基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
●税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
●控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

8. 相続税を払いたくない人がするよくある相談

相続税の負担を避けるために、こそっと生前に贈与してしまえばいいのでは?という質問をよく受けますが、そのような安易な租税回避ができれば、誰もが生前贈与を行って相続税の課税を免れようとします。そのような事態を避けるために、贈与税は相続税の補完税として相続税法上に規定され、相続税よりも贈与税の方が、税率が高く設定されています。
『こそっとやればわからない。』というのは、脱税行為です。相当厳しいペナルティーを覚悟する必要があります。
例えば、長男が、父親名義の保険(被保険者は母親)を自分名義に変更し、変更当時の解約返戻金額が500万円であった場合、500万円の贈与を受けたことになり(相続税基本通達9-9)、贈与税の計算は、(500万円-110万円)×20%-25万円=53万円となります。
仮に名義変更していなかった場合は、父親の死亡後、母親がみなし相続財産として保険金を取得し、配偶者の税額軽減(法定相続分の2分の1又は1億6000万円のいずれか多い方)を使って非課税となるケースでした。
安易な名義変更により、不必要で高額の納税義務を負担することになった典型例です。

9. 何をすれば一番良いか

そもそも節税という言葉は、それを売りにしようとする税理士が作った造語であり、税金を節約するという概念自体法律上存在することはありません。
よくわからない複雑なスキームを組んで、法律の隙間をかいくぐり、報酬を得るなどと言う発想自体が極めて稚拙であり、絶対に騙されてはいけません。
税法上、非課税枠や特例の規定があり、それを適用できれば、結果として納税額が少なくなることがあったとしても、それは税理士の手柄ではなく、法律上の規定に基づいて当然に得られるべき結果です。よって、計算式によって、これぐらい税金が安くなったので、その何%を報酬とするという発想は私には理解できません。
税法上の規定で最も活用されるべき方法は、年間110万円の贈与の非課税枠です。それを子供が生まれたその年から、ご自身が亡くなるまでコツコツ続けてください。お孫さんができれば、お孫さんにも同様に贈与してください。亡くなる年からさかのぼって3年分は相続財産に組み入れられますがそれはしょうがないです。
仮に子供が一人であったとしても、夫が40年贈与し続ければ、4400万円が非課税となります。たくさん子供や孫がいれば、数億円の非課税枠を使うことは簡単ですね。死ぬ直前に慌てて贈与したいと思ってもやれることは限られます。慌てて節税相談に行って、保険や不動産を買わされて損するのが落ちです。長期間かけてコツコツやることが最も効果があります。ただし、預金の管理は、子供が20歳を超えたら本人に渡してください。無駄遣いするからと言って親が管理すると親の財産となります(名義預金)。
無駄に使うも子供の勝手、有効に使うも子供の勝手です。子供の自主性を高め、有効に使うように指導することも親の勤めてである教育だと考えております。
私は、45歳でやっと第1子を得ましたが、既に贈与を始めております。私は、あと40年は贈与を続けて、必ず4400万円の非課税枠を使い切りたいと考えています。皆様もすぐに非課税枠の贈与を始めませんか?早めに、計画的に始めること、これが一番効果がありますよ。


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