未支給年金及び県民共済を受け取ると相続放棄できなくなる?

Q 父親がなくなりました。母親は先に亡くなっており、子供は私一人です。

 父は5000万円の負債を残して死亡しました。さしたる資産はありません。相続放棄しようと思いますが、役所から、1か月分の未支給年金があると言われました。これを受け取っても相続放棄はできますか?

 また、県民共済により死亡共済金が50万円ほどあります。これを受け取っても相続放棄はできますか?

A 未支給年金及び県民共済の死亡共済金を受け取っても相続放棄できます。しかし、共済の出資金及び過納掛け金を受け取ると相続放棄できなくなります。もし、共済の出資金及び過納掛け金を受け取った場合は、すぐに返金してください。

 相続人が相続財産の全部又は一部を『処分』したときは、相続人は単純承認をしたものとみなされ、相続放棄できなくなります(民法921条第1項)。

 よって、未支給年金及び県民共済を受給したことが民法921条の『処分』にあたるかどうかが問題となります。
 
 『処分』にあたれば、相続放棄ができなくなり、5000万円の負債を相続することになるので、慎重に判断する必要があります。

1. まず、未支給年金について

 最判平7・11・7(民集 49巻9号2829頁)は、相続放棄の有効性が争われた事案ではありませんが、未支給年金の支払い訴訟中に原告が死亡した場合に訴訟承継するかどうかが争われた事案において、国民年金法第19条は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途相続の対象となるものでない、と判示しました。

 つまり、未支給年金は相続財産ではありませんので、未支給年金を受領しても、相続放棄は有効です。

 よって、ご相談者様がお父様の借金を相続することはありません。

 参考条文:国民年金法第19条第1項と第4項
 「年金給付の受給権者が死亡した場合において、その死亡した者に⽀給すべき年⾦給付でまだその者に⽀給しなかつたものがあるときは、その者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であって、その者の死亡の当時その者と⽣計を同じくしていたものは、⾃⼰の名で、その未⽀給の年⾦の⽀給を請求することができる。」

2. 県民共済について

 県民共済で受領できるお金には、①死亡共済金のほかに、②出資返戻金③過納掛金があります。

 ①死亡共済金は,契約に基づいて支払われるものであるため,お父様の相続財産に当たりません。

 しかし、②出資金返戻金及び③過納掛金は,共済の契約者である被相続人に対して支払われるべきものであるので,その返還を受ける権利が被相続人の相続財産となります。

 よって、②出資金返戻金及び③過納掛金を受領すると、承認したとみなされて相続放棄できなくなりますので、絶対に受け取ってはいけません。

 参考判例:東京地裁平成23年 2月 9日判決(出典:ウエストロー・ジャパン)は、某弁護士から、相続放棄しても共済金の支払を受けることができると助言され、出資金返戻金まで受け取ってしまった相続人が、出資金返戻金を速やかに返した場合は、『処分』にはあたらないとして、債権者の請求を棄却した例です。

 某弁護士は、共済金には、出資金等もあるので、それは受け取ってはいけないとアドバイスするべきでしたね。

 相続放棄する場合に、共済金で受け取ってもいいのは、死亡共済金だけです。紛争に巻き込まれないためにも慎重に判断してください。

以上

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