父から相続した、どうしようもない土地を手放したいです。どうしたら良いですか?

 

 先日、父が死亡しました。父の遺産には、1億円の預貯金と4件の不動産(総額約8000万円)がありました。
 相続人は、母と私(長男)と弟の3人です。話し合いの結果、長男である私が全ての不動産を相続し、母と弟が預貯金を半分ずつ相続することとなりました。
 ところが、私が相続する不動産の1つに、私の知らない人里離れた田舎の土地がありました。調べてみたところ、その土地は雑草が生い茂る荒れ果てた土地で、全く利用価値のないような土地でした。
 どうやら、父はバブルの頃、いわゆる原野商法により、リゾート開発計画があるため確実に値上がりするとの説明を受け、投機目的でこの土地を購入していたようです。
 私としては、利用価値のない土地を相続しても、土地の管理や固定資産税の支払いなどの負担がかかるばかりで、全く良いことはありません。何とかしてこの土地を手放したいと思っています。
ですが、母や弟は、当然引き取りを嫌がっていますし、価値がないため買い手を見つけることもできません。
 父から相続した土地を誰かに引き取ってもらう方法はないのでしょうか。
 
相続土地国庫帰属制度ができました。以下、その説明をします。

 これまでは、相続財産のうちに不要な土地が含まれていても、全ての財産を相続した上で自ら管理するか、相続放棄の手続をとるしかありませんでした。
 しかし、不要な土地を相続すると、草刈りや固定資産税など、様々な負担がかかります。かといって、相続放棄をすれば、不要な土地だけでなく、他の全ての資産の相続権も失うこととなってしまいます。
 そのため、不要な土地は相続の際に放置されてしまい、相続登記もされないまま所有者不明となる土地が次第に増加しました。

 こういった状況を解消すべく、令和5年4月27日より、相続した土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度(「相続土地国庫帰属制度」といいます。)が開始しました。
 これは、相続等によって土地の所有権を取得した人が、その土地のみを手放して国に引き渡すことができる制度です。
 この制度を利用すれば、無価値の土地のみを手放すことができ、土地の管理責任や固定資産税の納税義務からも解放されます。
 この制度は、制度開始前(令和5年4月27日以前)に相続した土地についても、申請することができます。

(1) 手続の概要

大きく分類すると、手続は以下のように行われます。

①承認申請
…法務大臣に対して、土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請します。
②審査・承認
…承認申請された土地が、法令で定められた引き取ることのできない土地に該当しないか審査が行われます。該当しないと判断されると、法務大臣が土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。
③負担金の納付
…承認を受けた後、一定の負担金を国に納付すると、その時点で土地の所有権が国庫に帰属します。

 

(2) 制度を利用できる人

 この制度を利用できるのは、相続または遺贈を原因として土地を取得した相続人に限られます。
相続等により土地の共有持分を取得した場合には、共有者全員で共同して申請を行うことで、本制度を利用することができます。
 他方で、売買など相続等以外の原因により自ら土地を取得した人や、相続等により土地を取得することができない法人は、本制度を利用することはできません。

 

(3) 引き渡すことのできる土地

 相続した土地であれば全て引き渡せるというわけではなく、引き渡せる土地にも決まりがあります。
相続土地国庫帰属法に規定された類型に該当しない土地であることが求められます。具体例としては、以下のとおりです。
①申請の段階で却下となる土地(2条3項)
・建物がある土地
・担保権や使用収益権が設定されている土地
・他人の利用が予定されている土地
・特定の有害物質によって土壌汚染されている土地
・境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
②該当すると承認を得られない土地(5条1項)
・一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
・土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
・土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
・隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
・その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 

(4) 費用

①審査手数料
審査の手数料として土地1筆あたり1万4000円がかかります。
②負担金
審査を経て国庫帰属の承認がされた後、負担金の通知を受けた日から30日以内に、土地の性質に応じた標準的な管理費用10年分に相当する負担金を納付しなければなりません。
土地の性質にもよりますが、1筆ごとに10年分で20万円かかるのが基本です。土地が複数ある場合などは、ある程度のお金を準備する必要があります。

 

 令和6年4月1日から、相続登記の義務化が始まります。土地の所有者となる以上は相続登記を行う義務が課されます。すでに相続した土地の相続登記申請は、令和6年4月1日から3年間の猶予期間のうちに済ませなければならず、これを怠ると過料が科されます。
 無価値の土地を相続して困っている相続人の方は、今のうちに相続土地国庫帰属制度の利用を検討すべきでしょう。

 また、現在、相続等以外を原因として無価値の土地を所有している方は、生前のうちに、誰が土地を相続するかを決めて本制度を利用するよう伝え、土地を相続する相続人に多めに現金を渡す遺言書を作成するなどしておけば、相続の際に不要土地の処理をスムーズに行うことができると考えられます。

以上

安心と笑顔を実現する法律相談

無料相続法律相談会のご予約はお電話で
(電話受付時間は平日 am9:00~pm17:30 休み:土・日・祝日)
お電話の上、ご希望の相談日時をお伝えください。

現在LINE相談を一時停止しています


 

60分で不安が安心・笑顔に変わる法律相談はこちら


●ご相談の仕方●弁護士費用●ご相談者の声
●事務所 / 弁護士紹介●相談事例Q&A●解決事例