相続放棄と別居中の妻の遺族年金受給権

Q平成24年に現在の夫と婚姻しました。お互い再婚同士で、私は56歳で、夫は59歳です。夫の浮気が原因で平成28年から別居し、婚姻費用として月額20万円を毎月もらっています。

 夫は浪費家で、数千万円の借金があると思われますが、最近になって会社をクビになったと聞きました。

 夫にはさしたる資産もなく、借金だけを相続するのは嫌ですが、遺族年金は相続放棄しても受領できると聞きました。

 ただ、私の様に、別居しており、婚姻費用をもらっている場合でも、遺族年金はもらえるのでしょうか?
 
 また、夫とは、別居しておりますが、今後、内縁の妻ができたような場合は、仮に夫が死んだあとは、遺族年金は、内縁の妻がもらえるのでしょうか?それとも、別居しているが婚姻費用をもらっている私がもらえるのでしょうか?

A遺族年金は、遺産ではありませんので、相続放棄しても親族の方は受給可能です。

 どなたが受給できるのかは、「被保険者又は被保険者であつた者の配偶者、子、父母、孫又は祖父母であって、被保険者又は被保険者であった者の死亡の当時その者によって生計を維持したもの」とされています(厚生年金保険法59条)。

 これについては、遺族年金の受給と相続放棄をご参照ください。

 では、別居中の妻は、「配偶者」「そのものによって生計を維持したもの」(生活維持要件といいます。)といえ、遺族年金をもらえるでしょうか?

 この点について、長期間別居し、生活費、療養費等の経済的な援助が行われていなかったので、生活維持要件に該当せず、遺族年金を受けることはできないとした裁判例があります(東京地裁平成28年4月20日出典ウエストロー・ジャパン)。

 逆に言えば、生活維持要件があれば、遺族年金を受給できると考えられます。法律上は、別居していても配偶者ですし、婚姻費用をもらっていれば、生活維持要件を充たすので、無理に法律を縮小解釈する必要はないからです。

 では、長期間別居中であるが、婚姻費用が支払われている戸籍上の妻のほかに、死亡当時の夫に内縁の妻ができていた場合は、戸籍上の妻と内縁の妻のいずれに遺族年金受給権があるのかについて検討します。

 この点、夫とその法律上の妻との間で、離婚についての具体的な合意がなかったこと、別居後も経済的に法律上の妻を支援していたこと、夫からの離婚請求が認容される余地はなかったこと(浮気をした有責配偶者である。)等を考慮すると、内縁関係が、事実上の離婚状態にあったと評価するには足りないとして、内縁関係の存在を否定して、法律上の妻に遺族年金受給権があるとした例があります(東京高裁判決平成19年7月11日、判例時報1991号67頁)。

 一方、戸籍上の配偶者と別居し、他の女性と約30年間の長きにわたり内縁関係を維持継続した場合は、戸籍上の妻に受給権はないとした例もあります(名古屋地裁平成13年9月14日判決 判例タイムズ1086号124頁)。

 更に、いわゆる重婚的内縁関係の事案について、夫と戸籍上の妻が事実上の離婚状態にあるときは、当該戸籍上の配偶者は遺族厚生年金の支給を受けるべき同法59条1項所定の「配偶者」に当たらないところ、両者が事実上の離婚状態にあるか否かについては、別居の経緯、別居期間、婚姻関係を維持ないし修復するための努力の有無、別居後における経済的依存の状況、別居後における婚姻当事者間の音信及び訪問の状況、重婚的内縁関係の固定性等を総合的に考慮すべきであるとし、経済的依存関係自体は重要な考慮要素ではあるものの、それを超えて経済的依存関係の有無のみを事実上の離婚状態の認定において絶対的な要件とすべきとまでいうことはできないとした上で、戸籍上の妻との間に一定程度の経済的依存関係(婚姻費用の支払いの事実)があったことは認められるが、これを斟酌しても、夫が死亡した当時、両者は事実上の離婚状態にあったと認められ、戸籍上の妻は「配偶者」に当たらないとした例もあります(大阪高裁平成26年11月27日判決、出典:裁判所ウェブサイト)。

 婚姻費用の送金を受けている別居中の法律上の妻と同居の内縁の妻のいずれが遺族年金を受けるべき配偶者といえるのかという問題ですが、いずれの方が、亡くなった夫にとって配偶者として近いといえるのかということを、別居の経緯、期間、経済的依存度、修復努力、音信及び訪問状況、内縁関係の期間や実質等の要素を総合的に比べて決めるということです。

 要するに、長期別居状態でお金の送金を受けていたとしても、後で、内縁の妻が現れて長期間の内縁関係が継続されて、夫から見れば、内縁の妻の方が実質的な妻といえる状況となれば、内縁の妻が遺族年金受給権を取得する可能性が高くなるということです。

 夫がいつ亡くなるかはわかりませんので、離婚請求して、年金分割を申し立てる方がいいかもしれませんね。

 受け取ることのできる金額は、婚姻期間相当分に限定されるので、婚姻期間が短ければ、かなり少ないかもしれません。

 しかし、内縁の妻が現れて、全部取られるよりは、確実にいくらかはもらえることになります。

 あまり気分がすっきりしない回答で申し訳ありませんが、以上です。

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