母の死後に、母の兄弟が亡くなった場合の相続
- 2年前に母が亡くなりました。そして、2か月前に叔父(被相続人)が亡くなりました。叔父(A)は田舎に住んでいることもあり、生前はあまり会うこともありませんでした。
先日、別の叔父(B)から、「独身だった叔父(A)の遺産を分割したいので、近いうちにそちらに伺って協議書に判をもらいたい」との手紙が届きました。叔父(A)の遺産について、兄弟でもない私(相談者)が相続できるのでしょうか?
また、遺言書はなかったそうですが、一応叔父(A)と生前付き合いのあった叔父(B)が叔父(A)名義の不動産や預金の確認はしたようですが、叔父(B)の提案する遺産分割協議書にすぐに判を押したほうがよいのでしょうか?
- ある方がお亡くなりになった際に相続人となるのは、亡くなった方(被相続人)の配偶者は常に相続人となります(民法890条)。
また、相続人となるのは第1順位の直系卑属(子等)、第2順位の直系尊属(親等)、第3順位の兄弟姉妹となります(民法887条1項、889条1項)。
配偶者以外の相続人は、上位順位の相続人がいない場合に初めて相続人となります。今回のケースでは、叔父(A)に配偶者や子がおらず、祖父や祖母も先に死亡しているため、伯父(B)と相談者のお母様の2人が相続人の候補となります。
しかし、相続の開始前に亡くなったお母様は相続することができません。このような相続の開始前に相続人となる方が死亡又は相続人の欠格事由に該当(民法891条)若しくは廃除(民法892、893条)によって相続権を失った場合には、亡くなった方等の子が代襲相続を行うことができます(民法887条2項、889条1・2項)。
したがって、相談者も相続人となります。よって、今回のケースでは、叔父(B)と相談者の二人が相続人となり、叔父(A)の財産を相続することができます。
また、叔父さん(B)から遺産分割協議書が届いた段階で、ひとまず遺産分割協議書の控えをとり、すぐに弁護士に相談しましょう。
遺産分割協議とは、相続人間で遺産の分配方法について話し合いをすることです。話し合いがつかない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行います。遺産分割調停においても、話し合いがつかない場合は、遺産分割審判を申し立てることになります。
遺産分割を行ってしまうと、仮に叔父(A)に不動産等の他に多額の借金があった場合など基本的には相続放棄を行うことができなくなります(民法921条)。単純承認とみなされてしまうので、借金の調査は慎重に行う必要があります。
借金がなかった場合であっても、叔父(A)の配偶者や子の有無他の兄弟の調査の他、不動産の個数や評価、叔父(A)名義の預貯金など財産の調査を行う必要があります。また、遺産の額によっては、相続税申告が必要となるケースもあります。先に税理士に相続税申告を依頼したような場合は、不動産等の評価を相続税の申告のために路線価で行っている場合もありますが、相続税の評価と実際の時価では違う場合があるため、実際の時価を調査したうえ、慎重に遺産分割協議を行う必要があります。
遺産分割協議で、現物分割、代償分割、共有分割などの方法により、遺産を分割しますが、被相続人の土地建物を任意で売却して、その売却代金を分けるという選択肢もあります。
やはり、安易に分割協議書に署名せずに、後で不満に思うことを避ける意味や相続税申告、不動産の任意売却のことも見据えて一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
以上