親の介護を行ってきたことによる相続への影響

 私は、妻と共に母の介護を10年程行ってきました。兄弟はいずれも実家から離れており、年に1度会うかどうかという関係です。親の介護の大変さを兄弟に伝えても、分かってもらえず、実家に近いのだから当然という風です。今後母が死んだ後、私と妻が行っていた介護は相続でどのように評価されるのでしょうか。
 相続人の中に、被相続人の介護等を行い、これによって相続財産を維持又は増加について「特別の寄与」をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の「寄与分」を控除したものを相続財産として計算されます(民法904条の2)。
 法律上「寄与分」が認められるのは、介護等を行った方が「共同相続人」の内の一人である必要があります。もっとも、今回のケースのように、配偶者の父母の介護等をむしろ実の子よりも主体的に行っているというケースも少なくありません。
 相続人間の遺産分割協議が順調に争いなくまとまるのであれば、相続人の配偶者の行った寄与に関しても考慮した遺産分割が行われるのが一般的です。
 しかし、介護等への無理解や寄与額への合意が取れないようなケース、すなわち話し合いでの寄与分の合意が行い得ないケースでは、家庭裁判所における調停等手続に移行したとしても、相続人の配偶者による寄与が「寄与分」として認められないことが通常です。
 
 もっとも、「相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮すること」が許されるとした裁判例(東京高裁平成元年12月28日決定)も存在します。
 したがって、争いのあるケースでは配偶者の寄与が評価されないということはありませんが、「配偶者の寄与が相続人の寄与と同視できる場合」がどのような場合かなど明確になっておらず、それ自体が争いの対象となることもあります。
 
また、療養看護・介護における寄与分は、他の家事従事や財産出資といったタイプの寄与分に比べてもかなり認められにくくなっています。
これは、親族間の扶養義務の表れとしての療養看護が「特別の寄与」の程度に至っているとまで認めら貰えないためです。「特別の寄与」と認められるには、日頃から継続して行い(継続性)、かつ、特に報酬を得ていない(無償性)ことが必要とされています。

例えば、一日の内、大方はデイサービスを利用させていたような場合は、それ以外の時間について介護していたとしても、寄与分として認められる可能性は低く、また認められたとしても寄与の程度は低いとして定額しか認定されない可能性があります。

そして、仮に、寄与分はあると認められたとした場合でも、どの程度財産の減少を防いだかを説明する必要があります。
実際に寄与はあったのだろうけれど、金額が明らかでないとして遺産分割では具体的には反映されないという事態もありえます。そこで、おむつなどの消耗品やデイサービス等費用の領収書等を残しておき、また介護の内容についても24時間付きっきりだったというような抽象的な時間ではなく、通院に付き添った時間や介護の内容や回数などを記録しておくことが寄与分として認められる上で、説得的でしょう。

以下、介護による寄与分を実際に評価した裁判例を挙げておきます。

  1. 被相続人の介護を理由とする寄与分の申立に対し、遺産総額の3.2%強である750万円の寄与分が認められたケース
  2. 申立人の介護への専従性が認定されており、無償性につき争いがありましたが、他の相続人も同様に金銭を受領していたことから、介護の無償性が認められたケース(大阪家裁平成19年2月26日審判)。

  3. 認知症の被相続人の常時見守りが必要となったケース
  4. 被相続人が認知症となったことで常時の見守りが必要となった後の期間について、親族による介護であることを考慮して、一日あたり8000円程度と評価し、その3年分として、876万円を寄与分として認めました(大阪家裁平成19年2月8日審判)。

このように、介護による寄与分は、争いになった場合はもちろん、寄与分の額などでも争いの種となってしまいます。このような争いを未然に防ぐためには、あらかじめ介護を行った方へ多めに相続させる又は遺贈するという内容の遺言書の作成をお願いしたり、介護者を受取人とする生命保険契約を締結してもらうなどの方法を検討する必要があります。

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