騙されて相続放棄してしまった場合の対応ついて

Q 母がかなり前に亡くなり、父が再婚しました。私は長男ですが、兄弟は3名です。父が再婚した際には、私たち兄弟は成人しており、後妻さんとは折り合いが悪く、そのため父とも付き合いが疎遠となりました。

最近、父が亡くなり、後妻さんから、借金だらけで私も相続放棄するので、あなたたちも相続放棄した方がいいと言われて、兄弟3名全員が相続放棄手続を行いました。

ところが、後妻さんは相続放棄せず、父の不動産を単独で相続して売却したり、相続した預金で優雅な暮らしをしたりしているようですが、父の遺産の詳細はあまりよくわかりません。

私たち兄弟は、後妻さんに騙されて相続放棄させられたとしか思えません。相続放棄は撤回できないのでしょうか?

A まず、遺産の調査を行って、借金がプラス財産を上回っていないのかを確認し、プラス財産が多ければ、詐欺を理由に相続放棄を取り消し、遺産分割をやり直すか、遺産が既に処分されていれば、不法行為による損害賠償請求を行って、法定相続分相当額の賠償金の請求を行うべきと考えます。

家裁に一旦受理された相続放棄の申述は、原則撤回できません(民法919条1項)。しかし、民法総則および親族編の規定に従って取り消すことは可能です(同条2項)。ただし、取消権の消滅時効を追認可能な時期(プラス財産の方が多いことが判明した時)から6ヶ月、除斥期間を承認・放棄時から10年間としています(同条3項)。

具体的には、本件の様に他の相続人に騙されて相続放棄をした場合には家庭裁判所に申述して相続放棄を取消すことができます。

相続放棄の取消の方法は、家庭裁判所に申述書を提出する形で行わなければなりません(民法919条4項、家手201条5項)、これらの取消は家庭裁判所が申述受理の審判をすることにより成立します。

ここで注意ですが、本当にプラス財産が借金よりも多いのかどうかを確かめた上で、相続放棄の取り消し手続を行わないと、多額の借金を相続する羽目になり、やっぱり相続放棄の取り消しなど行わなければよかったという結果にもなりかねません。

そこで、相続人の財産の調査を行ったうえで相続放棄の取り消しを行うべきですが、詐欺までして財産を取得しようとした人が亡くなった被相続人の財産をすんなり開示するはずはありません。

まずは、お父さんの死亡当時の住所地の土地建物を調査し、周りの金融機関や郵便局の預金の履歴を取り寄せて、登記簿謄本や預金残高を確認しつつ、その中で負債がないのか、あるとすればどれぐらいの負債なのかを調査します。

ある程度の情報が集まった段階で、後妻さんに照会をします。後妻さんが回答を拒否した場合、この事実が借金よりもプラス財産が多いことを示す直接的な証拠とは言えませんが、重要な間接事実となります。

ある程度、プラス財産が借金よりも多いことが確認できた段階で、リスクを覚悟した上で、後妻さんに対して訴訟提起するかどうかを決定して、訴訟してでも財産を取り返したいと思えば、相続放棄の取り消し手続を行うことになります。

相続放棄を取り消しても、法律上、当然に遺産が返ってくることにはなりません。相続財産が、未だ名義移転されたり、費消されていなければ、遺産分割調停を申し立てることになります。

しかし、既に他の相続人に相続による移転登記がされ、名義が移転された不動産について、当然には、遺産分割協議の対象とはなりません。その場合は、個々の財産について遺産であることの確認の訴えを提起して、裁判所が遺産であることを認めた財産について、再度遺産分割協議や調停、審判をすることになります。

しかし、非常に煩雑で時間がかかりすぎます。

そこで、端的に、騙されて相続放棄させられた遺産相当額の損害が生じたとして損害賠償請求訴訟を提起する方法が妥当と考えます。類似の事例として、大阪高裁平成27年 7月30日判決があります(判例時報2284号72頁)。

相続放棄の取り消し手続を行う前の段階で専門家を通じてある程度の調査を行ったうえで、プラス財産の方が多いことが解ってから、6か月以内に、相続放棄の取り消しを行い、取り消しを行った後は、速やかに後妻さんに損害賠償請求訴訟を提起します。その訴訟手続きの中で、当事者照会手続や文書送付嘱託という証拠収集方法などを用いて、遺産の全体を確定していくことになります。

 

ご参考にしてください。

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