当事務所の事業承継サポート
事業承継には、大きく二つの問題があります。一つ目は、遺留分減殺請求による自社株が分散するという問題です。二つ目は、自社株式承継にかかる相続税、贈与税の負担が大きすぎるという問題です。
相続の問題は、ついつい先延ばしになってしまいますが、自社株式が問題となる事業承継では、問題はさらに複雑であり、先延ばしにしがちな問題といえるでしょう。70歳を過ぎる経営者も事業承継は5年以上先と考える人が60%程度いるといわれています。
事業承継のタイミングが遅れると後継ぎ問題や株式の散逸の問題、税負担の問題など多くの問題によって、事業承継自体が困難となります。
早め早めにご相談されることをお勧めいたします。
1. 遺留分減殺請求による自社株が分散するという問題
例えば、自社株式を承継者の長男に贈与し、贈与時の時価が3億円であったとし、後に被相続人が死亡し、死亡時の時価が10億円、法定相続人が配偶者、後継者の長男、長女の3名、自社株以外の財産が1億円である場合
遺留分算定の基礎財産は、特別受益として相続開始時の時価が基準となります。
とすると、遺留分算定の基礎財産は、自社株の10億円とその他の財産1億円の11億円となります。
また、長女の遺留分は、法定相続分である1/4の2分の1である1/8なので、1億3750万円が遺留分となります。
自社株以外の1億円を配偶者と長女で分けたとしても、8750万円について、長男が長女の遺留分を侵害していることとなります。長女は8750万円に相当する自社株の譲渡を請求することができます。これに対して、長男は、自社株を渡すか、現金で8750万円を長女に支払うこともできます。
贈与時の株価は3億円であり、それ以外の財産が1億であったので、贈与時の価格を遺留分算定の基礎とすれば、4億円であり、長女の遺留分額はその1/8の5000万円です。長女が自社株以外の財産の内5000万円を取得すれば、長男に対して遺留分減殺請求を行うことはできません。
自社株の評価時点を相続発生時とすれば、長男が事業を承継して、一生懸命に経営を行って株価を上昇させても、長女に遺留分減殺請求されることになります。これでは、事業承継への意欲が阻害されます。
このようなことが日本全体で起これば、だれも事業承継をしなくなり、日本経済そのものが衰退することになります。
民法上、遺留分の事前放棄という制度がありますが、遺留分を放棄する者が裁判所に許可の申立を行う必要があり、あまり利用されていないという実態があります。
2. 自社株式承継にかかる相続税、贈与税の負担が大きすぎるという問題
先ほどの例で、贈与の時点の自社株の価格は3億円ですので、長男は贈与税を約1億6000万円支払う必要があります。相続により取得した場合は。相続時点の株価は10億円ですので、相続税は約4億7800万円になります。相続した株式が3億円であったとしても約1億円の相続税の負担となります。
それだけの価値のある資産を承継する以上、それに見合う税金を支払うのは当然といえますが、実際にこれらの金額をねん出することは不可能であり、多額の税負担により、事業承継ができなくなるという事態になります。
3.
そこで、中小企業の経営承継の円滑化法が制定され、また、事業承継税制が定められ、自社株の散逸と多額の贈与税や相続税の猶予、免除制度ができました。