預金の着服と家賃収入の着服

長男に財産全部を相続させるとの遺言がある。遺留分減殺請求において、着服した預金全額と家賃収入の全額を遺留分算定の基礎財産に加えさせた例

事案の概要

 おばあさんは既に他界しており、おじいさんが認知症となりました。長男とその嫁は、おじいさんの財産である預金通帳全部と賃貸物件の管理を行いました。他の相続人が施設に入れるように勧めても、自分たちで面倒を見ると言って聞き入れません。

 認知症であることが明らかでも病院に連れて行こうとしませんでした。おじいさんが亡くなった後に、長男に財産全部を相続させるとの遺言書が見つかりました。長女、次女は既に亡くなっており、長女には娘が3名、次女には娘が2名おられます。

 遺留分減殺請求権は、1年で時効にかかりますので、まずは、内容証明郵便で遺留分減殺の意思表示を行います。次いで、相続関係の調査と相続財産の調査を行った結果、預金に多額の使途不明金があることが分かり、また、賃貸物件の家賃収入はどの預金口座にも入金されていないことが判明しました。

 長男に対して、預金の使途と家賃収入額の開示を求めましたが、開示を一切拒否したので、遺留分減殺の調停を申し立てました。

 長男側の弁護士は、長男が預金管理を行っていたことを否定しましたが、預金の履歴を見ると極めて不自然な引き出し方がされています。認知症になったと思われる時期から、50万円が毎日のように引き出されていたのです。おじいさんが何故毎日50万円を引き出すのか?そんなことをするはずがない。これは明らかに長男が預金を管理していたはずであると粘り強く主張しました。預金の使途不明金額は約3000万円に上りました。

 また、賃貸借契約書や確定申告書等から年間に500万円程度の家賃収入があり、それが5年で2500万円に上りました。その内、着服額は500万円程度となりました。
元々の遺留分減殺請求の基礎財産が2億円でしたので、それに3500万円を加算して、遺留分侵害額を計算すると、遺留分権者全体で、1200万円程度請求額が増額し、このケースでは、総額で約7800万円を取り戻すことができました。

弁護士からひと言

 遺言書で、相続人の一人が全部の遺産を相続するとされている場合、残った遺産を基礎として遺留分侵害額を計算するのは拙速に過ぎると言わざるを得ません。被相続人が生前の認知症になる前に遺言書が作成されている場合、このケースで言えば長男は既に遺産の全部が自分のものになるとわかっているので、遺留分に留意することなく、被相続人の財産を自分のものと考える傾向にあります。

 その状況下で、被相続人が認知症になると、自分のものと考えている財産を自分で管理することになるので、多くのケースで着服が発生します。

 そこで、賃貸物件の家賃収入等が預金に入金されているのか、預金の履歴に不自然な出金はないかを綿密に調査する必要があります。相続に不慣れな弁護士であれば、それを見落として遺留分減殺請求を行う恐れがありますので、注意が必要です。やはり、相続を専門としている弁護士に相談されることが一番安心であると思います。

 また、遺留分を侵害するような遺言書には、相続に不慣れな税理士がかかわるケースが多いのも特徴といえます。税理士が遺言書の作成を指導した背景の有無、認知症の有無、財産管理の状況等を踏まえて慎重に調査を行う必要があります。預金等の調査や家賃注入の調査は、決算書等の解読が必要であり、また、一定のレベルの調査能力が必要といえますので、専門家にご相談されることを強くお勧めいたします。

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