遺言の撤回

認知症になったAさんの友人Bが認知症に乗じて、財産を着服し、自己の有利な遺言を書かせた例

事案の概要

 裁判所から、保佐人に任命されAさんに会いに行くと、ご友人のBさんが施設の部屋で同席し、Bさん曰く「Aさんはあなたを保佐人に選任することは反対しており、解任しますので、今すぐお帰り下さい。」。私は、Aさんにも意思確認したところ、Aさんは本当にそう思っていますとのことでした。

 Aさんは認知症ですので、意思表示にはBさんの意見が強く影響していることは明らかでした。Bさんは、Aさんの財産を事実上3年程度管理しており、Aさんにはご家族はおられませんが、不動産(評価額5000万円)や預金等の財産(3000万円)があります。
 調査すると、Aさんの預金はBさんの子供名義で貯蓄型の保険契約が締結されており、また、BさんはAさんに、遺言を書かせ、遺言書の内容は、Bさんの親しい団体に全額寄付するというものでした。

 一旦、保佐の申立がなされると、ご本人の意思でも保佐人を勝手に解任することはできません。裁判所と協議しながら、AさんからBさんを遠ざけて、施設への出入りを完全に禁止し、Bさんの子供名義の保険を解約させ、返還させました。また、Aさんは、本当は前記団体に対して寄付したいとは思っていないことが判明したので、遺言書を撤回して、Aさんと子供のころからお付き合いのあるいとこの方へ遺贈する内容の遺言書に書き換えました。Bさんには、Cという弁護士がついており、BさんやC弁護士から執拗に業務に対する妨害を受けましたが、保佐就任から半年程度で、Aさんの生活に平穏が戻りました。ただし、撤回した遺言書の返還を求めても、Bさんは遺言書を返還しようとはしませんでした。撤回された遺言書には全く効力がないことから、遺言書の取戻しまでは行いませんでした。

弁護士からひと言

 認知症は、ご本人が気付かないうちに進行します。健康な時に親しく信頼がおけると思っていた方でも、多額の財産管理をし始めると、それを自分のものにしたいと考えることは、むしろ自然なことかもしれません。
 やはり、財産管理について信頼できるのは、裁判所の監督を受けつつ業務を遂行する任意後見人や成年後見人等の法定後見人ではないかと思います。ご家族に財産管理を任せている方も多いとは思いますが、お亡くなりになった後で多額の預金の着服が発覚し、相続人間で激しい争いとなるケースが後を絶ちません。ご家族が財産管理をされる場合も、成年後見人の申立を行って、裁判所を通じて監督を受ける形にする方が無難といえます。最近では、家族信託も選択肢の一つにはなりますが、特に自益信託の場合(委託者と受益者が同一人)、受託者である財産管理者が財産を着服し、成年後見人を選任せざるを得ないケースも散見されますので、ご注意ください。

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