公正証書遺言の作成手続
公正証書遺言を作成するには、基本的には、本人が公証人役場に出向いて作成します。体が不自由な方の場合は、公証人が本人のご自宅や介護施設、入院されている病院などに出張して公正証書を作成します。公正証書遺言作成の際には、証人2名が必要です。当事務所に依頼された場合には、当事務所の弁護士や職員が証人となります。
ただし、一般の方がいきなり公証人役場に出向いたり、公証人に出張を依頼して適切に遺言を作成することは困難です。
というのも、不動産等の資産がある場合や自社株がある場合や過去に贈与等がある場合は、遺留分を侵害しない遺言書を作成するためには、専門的知識が必要であるからです。
公証人は、もともと裁判官であったり、検察官で退官した方がなられることが多いですが、遺留分について配慮したり、遺言の有効無効を担保するための方法を提案してくれたりは致しません。
よって、当事務所では、まずは専門家である弁護士にご相談の上、遺留分に配慮し、また、無効となる余地のない適切な公正証書遺言を作成されることをお勧めしております。
当事務所が、ご相談を受けた場合、紛争防止策と相続税対策を視野に入れて調査を行います。公正証書遺言作成までの手続は以下のとおりです。
公正証書遺言作成手続の流れ
1. 相続人の調査と相続関係図の作成
相続人の範囲を明らかにするために、遺言者が生まれてから、遺言書の作成時点までのすべての戸籍謄本類(改正原戸籍や除籍謄本すべて)を取得します。また、推定相続人全員の戸籍謄本も申請し、相続関係図を作成いたします。
離婚歴等がある場合に前妻との子がいることや、婚外子がいる可能性もありますので、すべてのケースについてこの手続きは欠かせません。
2. 相続財産の調査及び財産目録の調製
相続財産調査も必要です。もっとも価値の高い財産は不動産です。不動産の調査は、固定資産納税通知書の後ろに一覧表がありますので、それで調査します。固定資産納税通知書は市町村ごとに来ますので、すべての市町村の固定資産納税通知書の一覧表をご用意いただきます。そのうえで、土地・建物の登記簿謄本を取得し、固定資産評価証明書、公図、地積測量図、建物図面、ゼンリン地図などすべてを取得します。賃貸物件であれば、利用関係が分かる契約書等の写しもご用意いただきます。
さらに、預貯金、株式、投資信託、生命保険、建物更生共済(積立金がある)等の金融資産や負債の返済予定表すべてをリストアップし、財産目録を作成します。
また、特別受益にも注意が必要です。過去に特定の相続人に対して多田区の贈与等があった場合は特別受益となる可能性がありますので過去の贈与についても聞き取り調査し、資料があればご提出いただきます。
3. 遺産分割方法を記載する。
遺言では、誰にどの割合で相続させるかを指定することができます。民法の法定相続分を変更することが可能となります。
もっとも、この際に、遺留分を侵害しないかどうかについて配慮しなければなりません。その際は、過去の贈与等の特別受益について、遺留分算定の基礎財産に含めて計算する必要がありますので、慎重な検討が必要です。
また、婚姻関係のない男女間の子を認知することができます。遺贈や寄付行為などの財産処分が可能です。
相続人又は孫や第三者に遺贈することや、法人等に遺贈又は寄付することも可能です。
4. 遺言執行者を指定する
遺言書は作成するだけでなく、それが確実に執行されなければなりません。当事務所では、公正証書遺言の作成を依頼された場合は、必ず当事務所の弁護士が執行者となり、その遺言の内容を確実に実現するようにしています。
遺言執行者を弁護士に依頼した場合は、執行手数料がかかるというデメリットもありますが、財産目録の調製等の煩雑な手続を相続人自らが行うことは大変な事務作業であり、登記名義の変更等もスピーディーに行えること、相続人の一人が遺言執行者になると他の相続人から、『お前がこんな遺言を書かせたのか!』などとクレームを言われたりするケースもあり、また、弁護士が遺言執行者となることで、事実上、遺留分減殺請求や遺言無効の訴えを抑制するという効果もありますので、メリットの方が多いといえます。
当事務所では、遺言作成時に、遺言執行者を指定することを強くお勧めしております。