相続税の計算方法

相続税の計算方法

1. 基礎控除(およそ相続税の申告が必要な事例であるかどうかを判定する基礎的な情報となります。)

平成27年1月1日以降の相続・遺贈の場合
3000万円+600万円×法定相続人の数=遺産にかかる基礎控除額となります。

2. 基礎控除額の意味

相続又は遺贈(死因贈与を含む)により、各人の取得した財産の課税価格の合計額が基礎控除額を超える場合、その財産を取得した各人は、相続税の申告・納税をする義務があります。

3. 相続放棄と基礎控除算定の基礎となる法定相続人の数

相続放棄があっても、基礎控除算定の基礎となる法定相続人の数には変動はありません。よって、相続放棄という人為的行為により、相続税の総額が変動することはありません。

4. 養子がいる場合

基礎控除等の相続税計算を行う場合に、法定相続人の数を基に行いますが、養子がいる場合は一定数に制限されています。
相続税対策として養子を迎えるケースもありますが、養子を迎えることによって生じる紛争のリスクと相続税計算時の制限を考慮しつつ養子を迎えるかどうかを判断する必要があります。
㋐被相続人に実の子供がある場合は、養子は1名までとなります。
㋑被相続人に実の子供がない場合は、養子は2名までとなります。
なお、被相続人と特別養子縁組している場合、被相続人の配偶者の子供で被相続人の養子となっている場合、実子等の代襲相続人は、実の子供として取り扱いますので、すべて法定相続人の数に含めることができます。
よって、孫養子であっても、代襲相続人でなければ、制限の対象となります。

5. 相続税額の算出方法は以下の4つの過程からなります。

㋐課税価格の合計額の計算
㋑課税遺産総額の計算
㋒相続税の総額の計算
㋓相続人毎の納付税額の計算

6. 課税価格の合計額計算

① 本来の相続財産とは、各人が相続や遺贈により取得した財産です。
② 相続税法上は、これにみなし相続財産が加わります。
民法上は相続財産に当たらないものであっても、相続税法上は相続税の課税対象となります。
主なみなし相続財産には、ⅰ)死亡保険金、ⅱ)死亡退職金等、ⅲ)生命保険契約に関する権利があります。
なお、500万円×法定相続人の数×その相続人のその相続人の取得した保険金等の合計額÷相続人全員の取得した保険金等の合計額までが非課税となります。
③ 被相続人から取得した相続時精算課税適用財産
被相続人から生前に贈与を受け、贈与税の申告の際に相続時精算課税を適用した場合、その財産は相続税の課税対象となります。この場合、贈与時の価格を相続税の課税価格に加算します。
④ また、相続開始前3年以内に相続人や受遺者に贈与された物があれば、これも相続財産に加算する必要があります。この場合、贈与の時の価格を相続税の課税価格に加算します。贈与税の非課税枠の範囲内であっても(年110万円以下)相続税の課税対象となりますので注意が必要です。なお、贈与税を支払っていた場合は、相続税額から控除されます。
⑤ 相続財産から控除できる債務や葬儀費用
ⅰ)債務には公租公課も含まれます。なお、遺言執行費用は債務控除の対象となる債務に含まれません(東京地裁昭和49.8.29判決)。
ⅱ)葬儀費用 なお、相続税法上は債務として相続財産から控除されますが、遺産分割実務においては、喪主負担とする裁判例があります。

7. 課税遺産総額(=課税価格の合計額‐基礎控除)を、各相続人の法定同族分に応じて取得したものとして計算することになります。

なお、特定の適用について申告書の提出が適用要件となっている場合は、基礎控除以下となる場合でも申告が必要となります。EX:小規模宅地等の特例

8. 相続税の総額計算 各相続人毎の合計に税率を乗じて税額を算出して合計します。

税率は以下のとおりとなります。(平成27.1.1以降)

●各相続人の取得金額 ●税率 ●控除額
〜1000万円以下 10%
1000万円超 〜 3000万円 15% 50万円
3000万円超 〜 5000万円以下 20% 200万円
5000万円超 〜 1億円以下 30% 700万円
1億円超 〜 2億円以下 40% 1700万円
2億円超 ~ 3億円以下 45% 2700万円
3億円帳 ~ 6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

9. 相続税の計算例

ⅰ)課税価格の合計額 3億4800万円
ⅱ)家族構成 配偶者と子供2名の場合 基礎控除額=3000万円+600万円×3名=4800万円
ⅲ)課税遺産総額は3億4800万円-4800万円=3億円
ⅳ)相続税の総額計算
配偶者=3億円×1/2=1億5000万円 ←税率40%-1700万円=4300万円
子供①=1億円1/2×1/2=7500万円 ←税率30%-700万円=1550万円
子供②=1億円1/2×1/2=7500万円 ←税率30%-700万円=1550万円
相続税の総額=7400万円となります。

10. 相続人毎の納付税額の計算

この相続税の総額を各人が実際に取得した財産の課税価格で按分することになります。
配偶者2分の1、子供二人が各4分の1ずつで遺産を分けた場合には、
配偶者=7400万円×1/2=3700万円→ただし、後述のとおり、配偶者に対する相続税額の軽減制度適用によりゼロとなる。
子供①=7400万円×1/4=1850万円
子供②=7400万円×1/4=1850万円となります。

11. 相続税額の2割加算

相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の1親等の血族及び配偶者のいずれでもない場合、その者の相続税額にその税額の20%相当額を加算します。
例えば、被相続人の配偶者の子供に包括遺贈した場合は養子ではないので1親等の血族とは言えず、2割加算となります。
また、いわゆる孫養子の場合にも2割加算されます。

12. 税額控除

税額控除の制度としては、㋐贈与税額控除㋑配偶者に対する相続税額の軽減㋒未成年者控除㋓障害者控除㋔相次ぎ相続控除㋕外国税額控除があります。
特に、㋑の配偶者に対する相続税額の軽減制度はよく使われます。なお、内縁関係の場合はこの制度の適用外となります。
配偶者が実際に取得した額の範囲内で、配偶者の法定相続分(1/2)又は1億6000万円のいずれか多い額について税額が軽減されます。
前記の例でいえば、配偶者の税額2466万6666円は課税されないことになります。
一見、相続税額を低く抑えるには、配偶者に対する相続税額の軽減を制限いっぱいまで使うことが得策のようにも思えます。
しかし、実際の相続案件では、資産の内、被相続人が経営している法人の株式が多くあり、子供の内一人に事業承継をさせるようなケースであれば、法定相続分通りに配偶者に1/2を相続させることが困難なケースもあります。
遺言書を作成する際等にも、相続税の納付額を低く抑えることだけを重視すれば、却って事業承継がうまくいかず、後に相続人間で争いに発展するケースもありますので、ケースバイケースで個別に判断し、相続税対策を講じる必要性があります。
遺言書作成時等に、相続税額を試算することが非常に重要となります。

13. 未分割の場合の申告手続について

申告期限までに遺産が未分割の場合は、その未分割の財産については、以下の規定の適用はできません。
㋐配偶者の税額軽減㋑小規模宅地等についての課税価格の特例㋒特定計画山林についての課税価格の特例㋓特定事業用資産についての相続税の課税価格の計算の特例
ただし、申告期限後3年以内に分割予定の場合で、上記㋐〜㋓の適用を受けようとするときは、申告書にその旨並びに分割されていない事情及び分割の見込みの詳細を記載した書類を添付しなければなりません。これを申告期限後3年以内の分割見込み書といいます。
さらに、3年以内に分割できない場合は、申告期限後3年を経過する日の翌日から2カ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」(相続等に関して訴えが提起されたなどの事情を記載します。)を所轄税務署長に提出して承認を受け、3年という制限期間を伸長することができます。そして、やむを得ない事情が亡くなった日の翌日から4か月以内に更正の請求書を提出すれば、特例の適用が可能となります。
一般に、被相続人の死亡後10カ月以内に、遺産分割協議が成立しない場合は、とりあえず、未分割として法定相続分通りに財産を得たとして相続税申告し、遺産分割協議が整ってから、更正の請求等をして、適用できる軽減措置の適用を受けることになります。
未分割のままでは、軽減措置を受けることができないため、特に、配偶者の税額軽減を受けることができず、一旦は、多額の相続税を納付しなければならないため相当の負担となります。
遺産分割協議で紛争となり、申告期限内に分割できない場合は、一時的であるにせよ、相当額の税負担を強いられるという典型的な例と言えます。
このような意味でも、節税対策を踏まえ、かつ、相続発生後に紛争の起こりにくい遺言書を作成する必要があると言えます。

 

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