減殺請求されたら

遺留分

1. 予防が重要

 遺留分減殺請求権は法律上の権利であり、いくら遺言書で被相続人がすべての財産を特定の相続人に相続させるといったとしても、遺留分の範囲内で減殺請求されるとその範囲内で遺留分権利者に財産を引き渡さざるを得ません。

 遺留分減殺請求権を避けるためには、遺留分を侵害ないような遺言書を遺言者に書いてもらう他はありません。
よくあるケースでは、父親がやっていたご商売を長男さんが引き継いで、代表者となり、会社とお付き合いしている税理士に相続のことを相談し、遺言書の作成についてアドバイスをうけるケースです。

 その場合、税理士は、顧問先の代表者である相続人の依頼で、遺言者の遺言の内容を検討しますので、どうしても特定の相続人に特に有利な遺言書の内容になってしまいます。税理士は特に遺留分について深い理解をされている方が比較的少なく、紛争による家族崩壊について目の当たりにした経験が少ないので、安易に遺留分を侵害するようなひどい内容の遺言書の作成をアドバイスする人が比較的多いといえます。

 遺留分を侵害するとどうしても相続人間の関係は悪くなります。どうせ遺留分については、返還請求を受けて引き渡さないといけないので、初めから遺留分相当額については、他の相続人に相続させるような遺言書の作成に努めるべきであると思います。

 元々仲の良い家族が、遺言書の内容で、家族関係が崩壊するのは、誠に残念です。初めから、遺留分相当額を相続させる内容の遺言書でも、遺留分減殺請求後の結果としては、あまり変わりはありません。

 遺留分減殺請求権は、1年の時効にかかるので、もしかしたら、遺留分減殺請求という権利を知らずに、時効期間が過ぎるのではないと期待する人もおられますが、これだけネットで情報が流れている中で、そのような期待を基こと自体的外れであると、そのような期待を抱かせるようなアドバイスをするような税理士は非常識だと思います。

2. 不動産・自社株の価格評価と預金等の管理について

 遺留分減殺請求されますと、ある程度、遺留分相当額については、引き渡さないといけないことはご理解いただいたと思いますが、不動産が絡む場合は、その評価によって、遺留分の額が変わってくることに注意が必要です。

 遺留分は、すべての基礎財産(相続時の財産と特別受益等を加算したもの)に対する割合によって変わってきますので、基礎財産が多ければ遺留分も多くなります。

 そこで、遺留分権利者は、不動産の価格を高く評価して、遺留分算定の基礎となる財産の総額を引き上げて、遺留分額を多くしようとします。
そのために、不動産の評価額を高く評価しようとすることになります。

 基礎財産の評価は、相続発生時の時価によりますが、明確な算定方法はないというのが実情です。相続税の計算方法による算定方法や、固定資産税評価額を割り戻す方法、公示価格による方法、路線価による方法等がありますが、どうしても話し合いがつかない場合は、不動産鑑定士の評価によることとなりますが、当事者双方につく不動産鑑定の評価は当然異なることになりますので、最終的には、訴訟内で、裁判所の判断によって不動産の評価が決定されることも少なくありません。

 相続財産に占める不動産の割合が高く、その評価額によって、遺留分最低の基礎財産の価格に大きな影響を与える場合には、不動産の評価が大きな争点となり、紛争が長期化する傾向にあります。

 相続財産に自社株が含まれている場合には、同様に評価が問題となります。

 また、生前に贈与があったり、預金の引き出しがあり使途が不明である場合には、使途を巡って紛争が長期化する傾向にあります。

 生前に被相続人の預金や賃貸物件の管理を任されていたような場合は、ゆめゆめ勝手に使ったりせずに、善良な管理者の注意義務を以て管理し、被相続人のために費消したことを証明できる明確な証拠をきっちりと保管するようにしてください。公明正大であることほど強いものはありません。

 きちんと財産の管理状況を開示し、疑ったことについて遺留分権利者が申し訳なかったと思わせれば、不動産の評価等についてもそれほど文句も言わずに、早期に合意できる可能性が高いです。

 欲張れば欲張るほど、泥沼となり、結果として、使途を説明できなかったことで、より多く返還せざるを得なくなったケースも決して稀ではありません。

3. 価格賠償

 遺留分減殺請求された者は、現物で返還することもできますし、価額弁償により現物返還を免れることもできます(民法第1041条)。

 不動産を減殺されたとしても、必ず不動産を引き渡す必要はなく、現金を支払えば、解決が可能ということになります。

 では、現金で払うのが良いか、土地を引き渡すのが良いか、いずれが有利かと言えば、多くのケースで、現金で支払うほうが得です。
というもの、相続税申告時に不動産については時価よりも低い評価額となるからです。

 相続税評価額で1億円の土地であれば、時価は1億5000万円となることもあります。

 遺留分算定時の評価は時価ですが、実際に売却してみないと時価というものはわかりません。時価評価について、きっちりと争って、仮に遺留分権利者との関係では1億2000万円で話がつけば、3000万円有利になりますし、税務署との間では1億円の評価ですのでその分の税金が低くなることになります。

 ただ、時価も変動しますので、時価だけにこだわって、得した損したなどと、一喜一憂するのはあまり得策ではありません。

 遺留分権利者の遺留分を侵害する程度に有利な遺言書を書いていただけたことに感謝しつつ、なるべく早期に紛争を解決しようとする寛容さが必要であると思います。

4. 相続税の更正の請求

 すべての財産を相続させるとの遺言書を書いてもらった人は、相続財産について相続税を支払う必要があります。死亡から10か月以内に申告納税する必要があります。

 遺留分を減殺されたら、その分相続財産が減りますので、更正の請求をして、払いすぎた税金を取り戻す必要があります。

 先ほどの例で言えば、現金で1億2000万円を権利者に支払った場合は、1億2000万円の評価で遺留分権利者は相続税を支払いますし、遺留分侵害者は更正の請求を行います。土地を引き渡した場合は、権利者は1億円の評価で相続税を支払い、侵害者は1億円の更正の請求をすることになります。


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