遺留分減殺請求するには

遺留分減殺請求するには

1. 遺留分減殺の意思表示

遺留分減殺請求は、遺言・生前贈与によって侵害された遺留分について、これを侵害している相続人などに対し、請求を行うことを言います。

兄弟姉妹を除く相続人には、承継されるべき最低限の割合(遺留分割合)があり、被相続人が遺言・生前贈与で、全財産を一部の相続人だけに譲ったような場合に、遺留分減殺請求を行使して、遺留分侵害額を取り戻すことができます。

※ このような場合はご注意ください。

・相続財産の大半を一部の相続人(例えば長男)に譲るという内容の遺
・言被相続人が、生前、相続人以外の者、例えば、愛人に大方の財産を贈与していた場合。
・被相続人が、世話になった介護施設や特定の介護者、宗教団体等に、全財産を寄付するという内容の遺言

このような場合は、遺留分が侵害されているのではないかと疑ってみる必要があります。遺留分が侵害されているのか否かは、不動産や株式の評価等が関係し、一般の方には容易には判断がつかないケースが多いといえますので、できるだけ早急に専門家にご相談ください。

そして、遺留分減殺請求の時効にご注意ください。

遺留分減殺請求は、遺留分を侵害されたことを知った時から1年以内に行う必要があります。必ず、意思表示を行ったことを証拠化する必要があります。口頭では、後で証明できません。
必ず、書面で遺留分の減殺請求の意思表示を行います。具体的には、配達証明付き内容証明郵便で行います。
中には、内容証明を受け取らないケースもあります。その場合は、訴状を送付して、特別送達により確実に送達させる必要があります。時効期間は1年と非常に短いですので、不公平な遺言書を見たらすぐに弁護士に相談されることをお勧めします。

2. 相続人調査と財産目録の調製

遺留分減殺請求の意思表示が送達されれば、とりあえずは、時効が完成することはありませんので、じっくりと調査を行います。
 遺産分割協議の時と同様に、相続人調査と相続財産調査を行います。
 まず、戸籍謄本を取り寄せます。死亡した被相続人や相続人等で既に死亡したものがある場合は、その者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本等を取り寄せます。慣れていないと時間が非常にかかりますので、専門家に任せることをお勧めします。
 
次に相続財産の調査になります。不動産は固定資産税の納税通知書の後ろに不動産の一覧表がありますので、それを元に不動産登記簿謄本、固定資産評価証明書、査定書等を取り寄せます。あとは、金融資産ですが、銀行等の金融機関に対して調査を行って、できれば過去10年に遡ってすべての預金の履歴を取り寄せます。

3. 特別受益の調査

特別受益とは、遺言書があり遺留分を行使するケースの場合は、被相続人の生前に行われた贈与による財産の移転を言います。
 遺言書で特定のものにすべて(又は、遺留分を侵害する程度に多くの)の財産が移転されていた場合で、更に、生前に贈与が行われていた場合は、その生前に行われた贈与による財産も相続財産に加算して、遺留分の侵害の有無を判断することになります。
 贈与は、不動産かもしれませんし、金融資産かもしれません。不動産の場合は、不動産登記簿謄本等から調査を行います。
金融資産の場合は、通帳の預金の履歴から調査を行います。
預金の履歴から不自然な引き出し等があれば、すべて抽出して、使途不明金総額を算出します。通帳が10通あると抽出作業は非常に煩雑で慣れていないと非常に不正確な調査となりますので、ご自身ではなさらずに、専門の事務所に依頼した方が確実です。
 この調査は、非常に重要です。残っている遺産が少額でも、使途不明金が大きい場合は、遺留分侵害額も大きくなります。
 預金のほかに、収益物件等があれば、被相続人の生前に一部の相続人が家賃を着服ししているケースも非常に多いので、遺言で財産を単独相続したものに紹介して、賃貸借契約書の写しや確定申告書や準確定申告書を取り寄せて、家賃総額が預金に入金されているか、利益の一部が行方不明となっていなかを緻密に調査します。
 預金の引き出しが行われていた場合は、被相続人が生前に贈与したものか、引き出したものが勝手に着服したものかは判然としません。
 それは、預金を引き出した者に訊いてみなければわかりません。
 預金引き出しの使途について照会し、被相続人の生前の生活費や必要な経費として使用したというのであれば、その証拠の提出を求めます。
 また、贈与を受けたという主張の場合は、特別受益として、遺留分算定時の財産に加算して、遺留分を請求します。
 また、勝手に費消したという場合は、被相続人から着服したものに対して不当利得返還請求権があると構成し、それを遺留分算定の財産的基礎に加算して、遺留分を請求することになります。

4. 減殺の順序

通常のケースでは、遺言書による遺贈により、遺留分が侵害されているケースが多いので、まず減殺するべきは遺贈となります。
 そして、遺留分額に満たない場合は、順次遡って贈与を減殺していきます。
 これは少し難しいので、わからなくても気にしないでください。

5. 調停

配達証明付き内容証明郵便で、遺留分減殺請求を行った後、相手方と交渉しても、遺留分の減殺に相手方が応じない場合は、家庭裁判所に、遺留分減殺請求の調停を申立て、相手方と話し合う必要があります。
不動産の評価や特別受益の有無などについて協議を行います。

6. 訴訟

家庭裁判所の調停で決着がつかなければ、遺留分減殺請求訴訟を提起します。いきなり訴訟提起しても違法ではありませんが、調停に付されることが良くありますので、通常は調停から始めるのが一般的です。
遺留分減殺請求を行う場合、すんなりと相手方が応じてくれることは殆どありません。
遺言で全部の相続財産が自分のものになると書いてあるのにどうして、遺留分を渡さないといけないのか、などと考えて激しく抵抗する人が多いのが実際です。
また、多くのケースで預金等の着服があり、黙っていれば、隠し通すことができるのではないか、逃げ切れるのではないか、と思っているのか、なかなか使途についても回答すらしようとしません。
遺留分減殺請求の調停、裁判は非常に複雑で、ご自身でされることは非常にリスクが高いといえます。
したがって、遺言書の存在を知り、自己にとって不利な遺言であると思えば、まずは弁護士に相談し、調査を依頼して、遺留分の侵害がないかどうかを確認する必要があります。
繰り返しますが、遺留分減殺請求の時効は1年と短期間ですので、時効完成間際になって相談されると送達を確実に行うために訴訟提起によらなければならないケースもありますので、できるだけ早急に弁護士相談されることをお勧めします。

7. 価格賠償

遺留分減殺請求は、相続財産に対して遺留分割合に応じて均等に減殺請求することになります。わかりにくいかもしれませんが、遺留分減殺請求権者は、いずれの相続財産を減殺するのかを選択することはできないことになっていますので、ご注意ください。
 預金と不動産があれば、侵害額に応じて割合的に減殺請求することになります。私は預金だけ欲しいと言ってもダメだということになります。
 ただし、こちらが不動産を減殺請求したいと思ったとしても、遺留分を侵害した物は、価格賠償すれば、不動産が減殺されることを避けることができます。不動産を引き渡したくないので、現金で支払いますという権利が、遺留分侵害者には認められています。

8. 相続税申告

遺言では、全く財産をもらえなくとも、遺留分減殺請求の結果、相続財産を取得することとなった場合には、相続税申告が必要です。合意成立後4か月以内に申告する必要があります。
減殺請求の結果、不動産を取得した場合は、相続税の申告上の評価では通常の時価よりも低い価格で評価されることになりますので、納税額を抑えるのであれば、不動産を取得した方が得ということになりますが、考えることは誰も同じですので、税金の多少はあまり気にしないようにした方が早期解決につながります。


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