家族信託が使われる例

家族信託が使われる例

1. 高齢者を保護し財産管理の負担をなくし、安全かつ安心な生活のための家族信託

事案の概要

独居老人の高齢者(X)が、多額の資産を保有しており、子供二人は既に独立している。Xは徐々に判断能力が低下してきている。オレオレ詐欺などに合わないように、長男に資産管理を託したい。Xの死亡後は、法定相続分に従って分けて欲しい。

長男に資産管理を託したい

このケースの場合の信託契約関係は以下の通りとなります。
長男のみが受託者となります。この点に心配があれば、次男を受託者監督人とするか、弁護士を受託者監督人に選任します。
信託期間は委託者死亡時までと設定します。
なお、所得税は受益者に課税されます(所得税法13条)ので、課税関係は従前と変わりません。受託者は、信託財産の名義を取得しますが、課税の負担はありませんので、ご安心ください。

2. 親なき後問題

 相談者X(70歳)には、子供A(40歳)がいるが障害を持っている。配偶者は既に他界しており、X死亡後の子供Aの生活について心配である。

このケースの場合の信託契約関係は以下の通りとなります。
甥が受託者となります。甥の監督に心配があれば、弁護士を受託者監督人に選任します。
信託期間は委託者及び受益者の死亡時までと設定します。受益権は委託者として、委託者死亡時に子供に移転することとします。
なお、委託者死亡により、受益権が子供に移転するので、子供は遺贈を受けたことにみなされます(相続税法9条の2第2項)。ただし、特定障害者に該当する場合は、3000万円又は6000万円を限度に贈与税が非課税となります(相続税法21条の4)。受託者は、信託財産の名義を取得しますが、課税の負担はありませんので、ご安心ください。子供さんが亡くなった後の財産の帰属先として帰属権利者を定めることもできますが、受託者の甥を帰属権利者に定めることもできますし、帰属権利者を定めなければ、子供さんが死亡した後の残余財産は国庫に帰属するか、甥は特別縁故者の申立をすることも可能であると思います。

3. その他、家族信託は、様々なケースに適用できますので、詳細は弁護士にご相談ください。

もっとも、事業承継については、家族信託には事業承継税制は使えないので、当事務所では事業承継に信託は採用しない方針です。
また、不動産活用と相続税対策として、例えば、駐車場等の遊休土地に収益物件を建てて、借り入れもしたいが、所有者が高齢のために、息子を受託者として、収益物件の管理をさせて融資も息子名義でさせたいというご要望のご相談もあります。
しかし、当事務所では、収益物件の建築は、将来的なリスクが高く(日本は40年後には人口が33%も減る。)、儲かるのは銀行と建設業者、サブリース業者だけであり、物件を引き継いだ者が大変苦労する可能性が高いと考えておりますので、ご相談自体お受けしない可能性があります。ご了承ください。

4. 注意点 家族信託と遺留分減殺請求権

 一部の見解として、受益権を特定の相続人に与えても、遺留分減殺請求訴訟を回避できるなどと主張している方もおられるようです。
この点に関して、いまだに裁判例もありません。
しかし、私見としては、家族信託によっても、遺留分侵害の問題となりうると考えています。
委託者兼受益者の死亡時に受益権が一部の相続人に移転するとした場合に、委託者の死亡時に受益権が移転します。「遺留分は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して、これを算定する(民法1029条)。」とされています。そして委託者の死亡時に「相続開始の時において有した財産」たる受益権が移転すると考えらえるので、家族信託による受益権の移転は、遺留分減殺請求権の対象となると思われます。あとは、鑑定人による受益権の評価がいくらになるかという問題となると思います(民法1029条2項)。
評価についての私見ですが、本来は、不動産や金融資産という物件や債権という財産権が遺贈や生前贈与によって移転し、遺留分が侵害されることになり、遺留分減殺請求権が発生します。上記の物件や債権等の財産権が、信託契約によって、受益権という権利に転換されただけであることから、その評価についても、受益権の移転時の不動産の価格や債権の残額が基準となるはずであると考えています。あと、民法上の遺留分減殺請求権が家族信託という制度によりなし崩し的に消滅するという解釈はあまりにも乱暴すぎるのではないかと思います。遺留分制度自体が不当であるという見解もあるようですが、遺留分減殺請求権が、相続人間の不平等を是正するものであること、遺留分割合の規定も遺言そのものを根底から覆すほど不合理とも言えないことからすれば、どうして不平等を是正することが不当であるのか、私には今のところ理解できません。あと、家族信託の場合、遺留分減殺請求によっても、取得できる権利は価格賠償のみとならざるを得ないと思います。
以上


老後の財産管理を家族等に託す家族信託に関してはこちらも参考にしてください

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