相続税対策 ①(非課税財産・不動産購入、相続時精算課税など)
相続税の対策として、以下のものがあります。
1. 非課税財産
非課税財産は、非課税枠を超える部分について課税されます。非課税部分を限度額まで使い切り、相続税対策を行います。
非課税財産の主なものは以下の通りです。
① 墓所、霊廟及び祭具並びにこれに準ずるもの
② 死亡保険し金の非課税限度額のもの
全ての相続人が受け取った保険金の内、500万円×法定相続人の数が、非課税限度額となります。相続税対策としてよく使われる方法です。
③ 死亡退職金の非課税限度額のもの
全ての相続人が受け取った保険金の内、500万円×法定相続人の数が、非課税限度額となります。
被相続人が、会社の代表者である場合に、会社が代表者を被保険者として、保険に入ることがよくあります。これも相続税対策でよく使われる方法のひとつです。
2. 不動産購入等による相続税対策
現金や預金の評価は、当然のように残高です。したがって、相続税の計算上は都のままの評価となります。不動産は、相続税基本通達により評価し、現金で持っているよりも不動産に変えた方が、評価分だけ相続税が安くなるということで、相続税対策として収益不動産が購入又は建築することがよくあります。
しかし、日本は人口減少が進行中であり、賃貸物件の需要も減少することが予想されます。何億もかけて収益物件を建築し、多額の負債を抱え、10年後に賃料収入も予想以上に減少して、借金が返済できず不動産を手放すという事態にもなりかねません。
そもそも、不動産賃貸業は、リスクの高いビジネスであって、安易に不労収入として、素人が手を出すべきではありません。経営計画もなく、キャッシュフロー計算もできず、決算書も読めない者が決して手を出してはいけないと考えています。
ハウスメーカーやサブリース業者などにとっては、相続税対策というのは営業の切り口に過ぎず、売り上げが上がればそれでいいのです。また、銀行などは多額の融資案件が獲得できればそれでいいのです。そして、ハウスメーカーと提携している税理士にとっては、ハウスメーカーから謝礼がもらえればそれでいいのです。後になって、物件の所有者が収益物件の経営で苦しむリスクがあったとしても、彼らにとって、そんなことはどうでもいいことなのです。
相続税対策としての、収益物件の建築には、相当なリスクがあります。リスクを十分に理解した上で決断するようにしてください。
以下は、不動産の資産の評価方法をご紹介します。
① 宅地
路線価という相続税評価の基準を用いて評価を行います。田舎の土地などは路線価がない場合もありますので、その場合は、倍率方式という方法(固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算する。)で評価します。
測量を行って、間口距離、奥行き距離を求め、奥行価格補正率、地区区分、間口狭小補正率、奥行長大補正率、不整形地補正率等を求めて土地の評価を行います。また、無道路地、がけ地等、容積率、私道、セットバック、都市計画道路などによる減額を行います。
また、広大地(標準宅地面積に比べて著しく地積が広大な宅地)の場合は評価が大きく減額されます。
② 家屋
固定資産評価額により評価します。
③ 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について
個人が、相続又は遺贈により取得した財産の内、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の内、選択をしたものの限度面積までの部分については、相続税の課税価格に参入すべき価格の計算上、規定の割合を減額することができます。
相続人等の生活基盤維持のために欠くことができないものについて、相続税の負担を軽くするための制度です。
例えば、被相続人等の事業の用に供されていた宅地等の内、貸付事業以外の事業用の宅地等については、400㎡の限度面積額について、80%の減額を受けることができます。貸付事業用の宅地等についても、200㎡で50%、又は400㎡で80%(特定同族会社事業用宅地等)の減額を受けることができます。
一般に多くみられるのが、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等で、330㎡の限度面積額について、80%の減額を受けるケースです。配偶者等によって取得され、減額を受けることが多くのケースで見受けられます。
3. 相続時精算課税適用財産の活用
相続発生前に、被相続人の財産を移転させた場合は、贈与税が課税されますが、相続時精算課税の適用を受けることにより、贈与税が免除され、相続発生時に相続税の負担のみとなります。
生前に財産の移転を行うことができ、贈与税が非課税とされるという点でメリットがあります。
相続時精算課税適用者が被相続人から取得した相続時精算課税適用財産の価格は、相続税の課税価格に加算され、相続税の課税対象となります。
加算される価格は、相続開始の時の価格ではなく、贈与の時の価格となります。
特別控除額は2500万円であり、贈与税が非課税となります。
適用対象者は、贈与者については、贈与した年初に60歳以上である父母又は祖父母、受贈者は贈与を受けた年初に20歳以上の者で贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫となっています。
また、相続税の課税対象財産に加算される価格は、贈与時の価格となりますので、贈与時と相続時において、財産の価格に大きな上昇があれば、その部分については相続税の減税効果があります。
相続時精算課税制度を活用すると、通常の贈与税の非課税枠は使えなくなりますので、この点についても注意が必要です。