遺産分割問題全体の解決の流れ
1. 遺産分割協議 → 遺産分割調停 → 遺産分割審判
遺言書がないか、又は、あったとしても一部の財産のみの処分方法が記載されているのみの場合は、遺産分割協議が必要となります。遺産分割協議が話し合いで成立しない場合は、遺産分割調停で話し合い、それでも話し合いがつかない場合は遺産分割審判という流れになります。
2. 遺産分割協議
遺産分割協議は、相続人間で遺産の分配方法について話し合いをすることです。話し合いがついて合意に至れば、通常は遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、各相続人が実印で捺印し、印鑑登録証明書を添付する必要があります。
3. 遺産分割協議書の作成
遺産分割協議により、不動産の取得者を決める場合には、後で相続登記が必要となります。相続登記をスムーズに行うために、不動産の表示を正確に行う必要があります。
もしも不動産の表示に誤りがあれば、相続人全員から再び遺産分割協議書に署名をもらい、実印で捺印していただく必要がありますので、特に不動産の表示については慎重に記載する必要があります。
相続登記に際して不備があると大変ですので、一般的には専門家に遺産分割協議書の作成を依頼する方が安全です。
金銭債権等の分割債権については、裁判例上は、相続の発生によって当然に分割されるという扱いになっていますが、一般的には、遺産分割協議書を作成して分割します。銀行等に対する預金債権は、遺産分割協議が必要であり、遺産分割協議書の提出がない限りは銀行等の金融機関は払い戻しに応じません。
借入金等の負債は、相続の開始により当然に分割されるのが原則であり、遺産分割協議により、特定の人が負債を承継すると合意しても、それを債権者に対抗することはできません。
もっとも、一人の相続人がプラス財産をすべて相続し、負債もすべて相続するとの遺産分割協議が成立した場合には、すべての財産を相続した相続人だけが負債も相続するとした裁判例があります。
4. 遺産分割調停
遺産分割協議を行っても、話し合いがつかない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行います。調停を行う裁判所は、相手方のうち一人の住所地を管轄する家庭裁判所か、当事者の合意で定めた家庭裁判所となります。
5. 遺産分割審判
遺産分割調停においても、話し合いがつかない場合は、遺産分割審判手続きに移行することになります。管轄する裁判所は、被相続人の住所地又は相続開始地の家庭裁判所となります。
一般的には、当事者が申し立てた家庭裁判所にて審判手続が行われます。
6. まとめ
以上のとおり、下記のような流れになります。
被相続人が残した財産には、遺産分割の対象になるものと、遺産分割の対象とならないものとが、混然一体となっています。
一般の方にとって、その区別は容易ではありませんし、相続人全員が納得でき、公平な遺産分割を早期に実現するためには、相続を注力分野とする弁護士に相談されることをお勧めいたします。