預金等の使い込みの調査方法
1. 預金等の使い込みの調査方法
預金の使い込みを調査するには、被相続人のすべての預金通帳の取引履歴を取り寄せて、引出しの記録を確認することが必要です。被相続人の財産管理能力が低下して、一部の相続人が財産管理を独占的に行っている期間が長期に及ぶ場合は、預金の使い込みも長期にわたります。
銀行の取り扱いでは、最長10年間の預金通帳の履歴を取り寄せが可能です。複数の預金通帳がある場合は、そのすべての預金通帳の履歴の調査が必要となります。
2. 使い込みが行われた形跡のある預金通帳の履歴
よくあるわかり易い着服の場合は、被相続人のキャッシュカードを利用して、毎日にもわたって引き出し限度額いっぱいの預金が引き出されているケースです。月曜日から金曜日まで毎日50万円の預金が引き出されているような場合です。
被相続人ご本人が引き出すのであれば、窓口に行って手続を行えば大口の引き出しも可能です。被相続人ご本人が引き出す場合は、毎日少額の預金を引き出すような面倒なことは致しません。
よって、小口の預金が何度も何日にもわたって引き出されている事実のみから、一部の相続人による着服が推認されるのです。
3. よくある預金等の使い込みをごまかす方法
例えば、預金通帳が10通ある場合、ある通帳から別の通帳へ、頻繁に預金の移動がなされていることがあります。これも非常に不自然であり、預金の移動を頻繁にして、一見して着服がわからないようにあえてそのような移動がなされていると疑われます。
預金を着服する側も、発覚を恐れて、あえてこのような偽装工作を行います。
4. 当事務所の預金等の使い込みの調査方法
当事務所が預金の使い込みの調査を行う場合、すべての預金通帳の日付を統一した一覧表を作成し、通帳から通帳への移動等の動きを全て書きだし、通帳から預金が減っている金額を一つ一つチェックしていきます。
通帳の履歴が10年間あり、通帳が10通にもわたる場合は、気の遠くなる作業となります。預金の使い込みの調査は気の遠くなるような砂をかむような作業を続けて、一つ一つの不自然な預金の引き出しの事実を積み上げていき、説明のつかない使途不明金の総額を算出します。
依頼者の方がご自身で取引履歴を取得されて預金の使い込みが2000万円もあるとしてご相談に来られるケースでも、当事務所が調査をやり直すと使途不明金が6000万円にも膨らんだケースがあります。
預金の使い込みの調査は一般の方では正確に行うことは困難ですので、預金使い込み案件を豊富に取り扱った経験のある弁護士に相談するのが確実であると思います。
預金の使い込みの調査には相当の時間がかかりますので、遺産分割協議が長期化する一つの原因となります。